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2016年5月14日 (土)

日本国憲法改正草案(前編)

 自民党が2012年に発表した「日本国憲法改正草案」。これまで,僕はこんな草案はまったく気にとめていませんでしたが,この夏の参院選の争点になるかもという噂があり,ちょっとだけ真剣に読んでみたので,主な改正点と気になった点などをコメントしておきたいと思います。ただし,僕の憲法に関する知識は,義務教育プラス理系大学の教養課程程度で,法律の専門家でもないし法律を専門的に学んだわけでもありません。あくまで一素人の感想ということでご了承下さい。

 なお,改正箇所(青文字部)は要点のみを記載し,条文は必要に応じて簡略化したり表現を置き換えたりして記載しています。草案の詳細はこちら↓
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf
 現行の日本国憲法との相違点がわかるように対照表の形式になっています。

前文:全面改定

第1条:天皇を「象徴」から「元首」に変更。
→ん? 明治憲法に逆戻り? とも思いましたが,そもそも現在の日本の「元首」って誰?・・・調べたところ,「天皇」「内閣総理大臣」「いない」など,いろんな説があるようで,対外的な実質的「元首」としての職務は,ケースに応じて天皇が行ったり内閣総理大臣が行ったりしているそうです。新たに「元首」を定義する必要があるのかはよくわかりません。ただ,実質的に政治的権能を有しない天皇を「元首」と呼ぶのにはちょっと違和感を覚えます。

第3条:「国旗は日章旗とし,国歌は君が代とする。日本国民は,国旗及び国歌を尊重しなければならない」を追加。
→う~~ん,そうですか。憲法に入れたいですか。
 国旗と国歌に関しては「国旗及び国歌に関する法律」に規定されており,この法律の「別記」に,国旗の具体的デザインや国歌の楽譜が掲載されています。具体的なデザインや楽譜を憲法に記載せず,単に「日章旗」「君が代」と書くだけで一意性が保てるのか,ちょっと疑問。憲法としては「国旗・国歌は法律で定める」程度でいいんではないでしょうか。
 ちなみに,「国旗及び国歌に関する法律」には国旗のサイズ(縦横比率や日章部分の割合など)が厳密に定義されているので,これなら一意性が確保できています。ただ,日章部の色が「紅色」としか書かれておらず,これでは不確定。エンジニア的には,マンセル記号や24ビットRGBコードなどで定量的に表現して欲しいものです。
 あと,草案の第2項に「日本国民は,国旗及び国歌を尊重しなければならない」と書かれていますが,こう書いて国民に強制しないと国旗や国歌が尊重されないというのは悲しいこと。ちなみに僕は,日本だけでなく,どの国のものでも(アメリカでも中国でも北朝鮮でも),国旗や国歌はその国のシンボルであり「尊重」していますよ。それが大人としてのマナーなので。

第4条:「元号は皇位の継承があったときに制定する」を追加。
→う~~ん,やっぱりこれも憲法に入れたいですか。
 ちなみに,元号の制定を憲法に入れるかどうかとは別の話として,どう考えても西暦の使用を止めるわけにはいかないのが現実であり,日本でしか通用しない年号を西暦とは別に設けることの合理的理由が僕には理解できません。また,「ある日突然」年号が変わるのは,日常生活面でもシステム的にも非常に不便。ということで,僕は個人的には原則として西暦を使用するようにしています。僕が長年勤めていた会社でも,社内ではすべて西暦で統一していました。それでも,対外的(特に役所相手など)には元号記載がスタンダードで元号の使用を強制されており,結局は「元号は使いたい人だけ使えばいい」とはなっていないのが現実。ほんと不便です。

第5条~第7条:天皇の国事行為について,「内閣の助言と承認を必要とし,内閣が責任を負う」とあるのを「内閣の進言を必要とし,内閣が責任を負う」に変更。また,「国や公共団体などが主催する式典への出席や公的な行為を行う」を追加。
→「助言」が「進言」に変わっています。「助言」というのは「上の者が下の者に教える」という意味合いがあるため,天皇に対しては「進言」の方が適切ということなのでしょう。「内閣の承認が必要」が削除されているものの,「天皇のすべての国事行為には内閣の進言が必要」とあり,天皇が独断で主体的に国事行為を行うことはできないという点で,現行憲法と同等なのかと解釈します。
 なお,天皇の国事行為について,この際なので,形式上のものは内閣や国会が直接行うようにして,天皇が行う国事行為は儀式などに限定してもいいんではないでしょうか。

第9条:「戦争を放棄し,国際紛争を解決する手段としての武力行使を永久に放棄」を「戦争を放棄し,国際紛争を解決する手段としては武力行使を用いない」に変更。
→「武力行使を永久に放棄」を「武力行使を用いない」に変更。この変更をめっちゃ気にする人もいそうですが,戦争を放棄することに変わりはないので,僕はあまりこだわりません。ただ,「武力行使を永久に放棄」→「武力行使を用いない」→「武力行使を用いる」のように,段階的に武力行使を合法化しようとしているようにも見え,ちょっと気になるところ。

第9条-第2項:「前項の目的を達するため戦力は保持しない。国の交戦権は認めない」を「前項の規定は自衛権の発動を妨げるものではない」に変更。
→違憲という意見がある(笑) 自衛隊を合法化するための条文変更ですね。ちなみに,現在の自衛隊は,明らかに自国防衛の域を超える「軍隊」であり,現行の憲法に照らせば違憲であることは間違いありません。どこをどう解釈すれば自衛隊が合憲で集団的自衛権の行使まで可能になってしまうのか,僕には理解できません。
 こういうことを言うと「自衛隊を違憲といいながら自衛隊の災害救助の世話になるのはけしからん!」みたいなアホなことを言う人がいますが,災害救助や必要最小限の防衛に関して違憲と言っているわけではなく,災害救助や防衛には不要な過剰装備等について違憲と言っているだけですので,念のため。
 いずれにしても,改正案に自衛権を明記することには反対しませんが,「戦争は放棄」と明言している限り,自衛を超える軍備については認めないということをきちんと明記した方がいい。そうでないと,拡大解釈の連続で際限なく軍備が拡張されるのは目に見えています。

第9条の2:「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍の保持」を追加。

第9条の2-第2項:「国防軍は国会の承認他の統制に服する」を追加

第9条の2-第3項:「国防軍は第9条第1項の活動の他,国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調する活動,および国民の生命・自由を守るための活動を行うことができる」を追加。
→国の平和や国民の安全を確保する目的以外に「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調する活動」も行えるとしている。たとえばアメリカが戦争していて,その戦争が「国際社会の平和と安全を確保するため」と判断すれば(誰が?),国防軍は世界中のどこででも活動ができるということ。昨年法制化された集団的自衛権が違憲だったのを合憲化しようということなんですね。順序が逆だろ!って思いますが。

第9条の2-第4項:「国防軍の組織等については法律で定める」を追加。

第9条の2-第5項:「国防軍に属する軍人や公務員がその職務や機密に関する裁判を行うために,国防軍に審判所を置く」を追加。
→裁判所とは別の司法組織を国防軍の中に設けるということで,いわゆる軍法会議(軍事裁判所)のことでしょう。「戦争は放棄する」「武力行使は用いない」といいながら,軍法会議を設けることの必要性がイマイチ理解できません。

第9条の3:「国は領土・了解・領空を保全し,資源を確保しなければならない」を追加。

 長くなったので,今回はここまで。

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