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2016年5月16日 (月)

日本国憲法改正草案(後編)

 前回の続き(最終回)です。自民党が2012年に発表した「日本国憲法改正草案」の主な改正点と僕のコメントです。改正箇所(青文字部)は要点のみを記載し,条文は必要に応じて簡略化したり表現を置き換えたりして記載していますので,ご了承下さい。草案の詳細はこちら↓
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf

第79条-第2項:最高裁判所の裁判官の国民審査規定を「法律の定めるところにより国民の審査を受ける」に簡略化。
→憲法としてはこれでもいいけど,現行の国民審査の「空白/× 方式」は,審査として正常に機能しておらず,はっきり言って憲法違反。この際なので,「裁判官ごとに信任・不信任・棄権を選べる方式とすること」のように明確に記載して欲しい!

第79条-第5項:最高裁判所の裁判官の報酬が在任中は減額できない規定に対し,「分限・懲戒・一般公務員の例の場合 を除く」を追加。
→裁判官だけ特別扱いする必要はないと思うので,賛成。

第80条-第1項:下級裁判所の裁判官の任期について,「10年」を「法律で定める任期」に変更。

第80条-第2項:下級裁判所の裁判官の報酬が在任中は減額できない規定に対し,「最高裁判所の裁判官の報酬規定を準用する」と変更。
→裁判官だけ特別扱いする必要はないと思うので,賛成。

第81条:「最高裁判所は一切の法律等が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する」(現行どおり)
→と言いながら,裁判所は法律等の違憲審査請求だけでは審査してくれず,具体的な被害を被った上で民事訴訟などを起こさない限り,違憲かどうかの判断はやってくれません。これはこれで裁判所の怠慢であり憲法不遵守だと思います。この際なので,「違憲訴訟があれば裁判所はその法律等の適合性を審査する義務がある」のように明確に憲法に規定して欲しい。

第83条-第2項:「財政の健全性は確保されなければならない」を追加。

第86条-第2項~第4項:「内閣は会計年度中に補正予算案を提出できる」「当該会計年度開始前に予算案の議決を得られる見込みがない時は,内閣は暫定予算案を提出しなければならない」「会計年度の予算は,国会の議決を経て翌年度以降も支出できる」を追加。

第89条:宗教活動への公金支出の禁止に関し,第20条-第3項にある「社会的儀礼又は習俗的行為」の場合は可能とするように変更。
→第20条-第3項のコメントと同じ。「社会的儀礼又は習俗的行為」の定義が曖昧であり,歯止めがなくなりそうでコワいです。

第89条-第2項:「公金は,国や地方公共団体などの監督が及ばない事業に支出できない」を追加。

第90条:国の収支決算について,「内閣は国会に提出」を「内閣は両議員に提出して承認を受ける」に変更。

第90条-第3項:「内閣は,会計検査報告の内容を予算に反映させて国会に報告」を追加。

第92条:「地方自治は,住民参加を基本とし,住民に身近な行政を総合的に実施する」および「住民は,地方自治体の役務を受ける権利と費用負担の義務を負う」を追加。

第93条:「地方自治体の種類は法律で定める」を追加。

第93条-第3項:「国と地方自治体は協力しなければならない」および「地方自治体は相互に協力しなければならない」を追加。

第94条-第2項:地方自治体の参政権対象者に「日本国籍を有する者」を追加。

第96条:「地方自治体の経費は自主的な財源を充てることを基本とする」「自主的な財源だけで不足の場合は,国は必要な財政上の措置を講じる」および「第83条-第2項(財政の健全性)は地方自治にも準用する」を追加。

第97条:地方自治特別法について,「特定の地方公共団体の組織・運営・権能について他の自治体と異なる定めをし,または特定の自治体の住民にのみ義務を課し権利を制限する特別法」と追記。

第98条:「緊急事態の宣言」について追加。要点は下記。
(1)内閣総理大臣は,外部からの武力攻撃・内乱等による社会秩序の混乱,大規模な自然災害,その他法律で定める緊急事態において,閣議にかけて緊急事態の宣言を発することができる。
(2)緊急事態の宣言は,事前または事後に国会の承認が必要。
(3)国会の不承認,国会による解除宣言の議決,および宣言が必要なくなった時に,閣議にかけて緊急事態の宣言を解除する。また,100日を超えて緊急事態宣言を継続する時は,100日を超えるごとに事前に国会の承認が必要。
(4)国会承認等に関して衆議院と参議院で異なった議決がされた場合や衆議院が議決して5日以内に参議院が議決しなかった時は,衆議院の議決が有効。

第99条:「緊急事態宣言の効果」について追加。要点は下記。
(1)内閣は法律と同一の効力を持つ政令が制定でき,財政上必要な支出や地方自治体へ必要な指示が可能。
(2)この政令と財政処分については,事後に国会の承認が必要。
(3)緊急事態宣言が発せられた場合,国民は国や公の機関の指示に従わなければならない。この場合でも,この憲法の基本的人権に関する規定は最大限に尊重されなければならない。
(4)緊急事態宣言が発せられている間は衆議院は解散されない。両議員の任期は特例を設けることができる。

→第98~99条の緊急事態条項は,かのヒトラー政権の「全権委任法」とまったく同様に,内閣による無制限立法が可能となり,これは「完全にアウト!」です。その気になれば,衆議院で過半数の議席を獲得した与党が何でもできてしまう。「3分の2」とかでなく過半数! しかも,衆議院が優先なので参議院での与党議席が半数以下でもできてしまう。
 たとえば,衆議院で過半数議席を獲得した与党で構成された内閣が,国内でテロとか大規模災害があった時に,内閣だけの判断で緊急事態を宣言できる。事前にせよ事後にせよ,与党は承認するでしょう(衆議院に優先権があるので参議院は否決でもいい)。100日を超えて継続する場合も同様。この宣言により法律と同じ効力を持つ政令が内閣単独でできるので,たとえば内閣の判断だけで法律が自由に制定できるような政令を作ってしまえば,それによって成立した法律自体は「法律」になってしまうため,緊急事態宣言が解除されたとしてもその規則は「法律」として有効。野党議員の議員資格剥奪なんかも簡単にできてしまいます。
 なお,憲法も当然法律の一つなので,緊急事態宣言時には憲法と同一の効力を持つ政令を出すことも可能なはず。第101条に「憲法に反する法律や政令は無効」とあるものの,緊急事態における「法律と同一の効力を持つ政令が制定可能」の方が優先すると解釈できます。これは,第99条にあえて「基本的人権に関する規定は最大限に尊重」と書かれていることからもわかります(憲法と同一効力の政令が不可なら,これを書く必要がないので)。なお,「基本的人権に関する規定は最大限に尊重」と書いてあるものの,あくまで「尊重」であり義務ではありません。
 そもそも,地下鉄サリン事件のような大規模テロや,阪神淡路大震災の時も東日本大震災の時も,既にある法律で十分対応できており,政府による緊急的立法行為が必要だったという話は聞かないし,この条文の必要性が理解できません。緊急時に法律の制約でできなくて困ることがあるなら,それを事前に洗い出して法律に反映させておけばいいだけ。想像力が欠如しているためその洗い出しができないということなのでしょうか。
 ということで,この第98~99条は,与党の過半数議席獲得だけで与党の意のままに何でもできてしまう,とんでもない条文と言えます。野党はこんな不条理な条文には賛成できないでしょう。同様に,今の与党が野党になったら,こんな条文は許せないと感じるはず。この条文は,自分自身が野党になった時のことを想定できない「想像力欠如」であると感じます。
 さらに,第99条にある「緊急事態宣言が発せられた場合,国民は国や公の機関の指示に従わなければならない」という記載も強烈。緊急事態かどうかにかかわらず,国民が法律や政令に従わなければならないのは法的には当然であり,それはあえて憲法に記載する必要がありません。あえてここに記載しているのは「法律や政令になくても国や公の機関の指示には従わなければならない」という意味です。恐ろしすぎます。

第100条:憲法改正手続きについて,「各議員の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し,国民投票で過半数の賛成が必要」を「各議院の総議員の過半数の賛成で国会が議決し,国民投票で有効投票の過半数の賛成が必要」に変更。
→そもそも,憲法に限らず,法律が頻繁に変わることによる不合理さというのがありますね。たとえば,選挙で国会勢力が変わるたびに,死刑制度が廃止されたり復活したりと繰り返されても困る・・・みたいな。その意味で,法律というのはある程度「変更しにくく」しておくことも理にかなっていると思います。で,通常の法律が「出席議員の過半数で成立」に対して,憲法については「各議院の総議員の過半数の賛成で国会が議決」,さらに国民投票を行うことによって「変更しにくく」なっており,僕としてはこの草案の条文でもいいのかなと思います。

現行の第97条:「基本的人権は・・・侵すことのできない永久の権利として信託」を削除

第102条:「天皇・大臣・国会議員・裁判官・その他公務員は,この憲法を尊重し擁護する義務を負う」を「すべて国民はこの憲法を尊重。大臣・国会議員・裁判官・その他公務員はこの憲法を擁護」に変更。
→「尊重する人」と「擁護する人」を使い分けているようですが,そもそも「尊重」も「擁護」も具体的に何を意味しているのか,よくわかりません。


 では,最後に,僕が特に気になった変更点をまとめると下記です。

(1)第9条の2-第3項の,集団的自衛権を違憲状態から合憲にするための憲法改正については,集団的自衛権が本当に必要なら改正すべきとは思いますが,結局集団的自衛権の必要性が全然明確になっていない。昨年政府が説明していた適用例は個別的自衛権で対応できるものばかりだったと記憶しており,集団的自衛権を合法化して何をどこまでやろうとしているのかはっきりせず,心配です。

(2)第21条第2項の「表現の自由」への制限の追加は,はっきり言って怖い。治安維持法の再来となる可能性があります。

(3)第24条の「家族は助け合わなければならない」という価値観の押しつけは勘弁して欲しい。

(4)第98~99条の緊急事態条項の追加は,ヒトラー政権時代の全権委任法と同じ道に進む危険性があり,絶対にダメ!

 ということで,この草案が自民党内の一部の人が「お遊び」で作った程度のものなら全然気にしませんが,正式に自民党の選挙公約に上がるのであれば,選挙で自民党に投票する勇気は僕にはありません。


関連ブログ:
 日本国憲法改正草案(前編)(2016年5月14日)
 日本国憲法改正草案(中編)(2016年5月15日)

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2016年5月15日 (日)

日本国憲法改正草案(中編)

 前回の続きです。自民党が2012年に発表した「日本国憲法改正草案」の主な改正点と僕のコメントです。改正箇所(青文字部)は要点のみを記載し,条文は必要に応じて簡略化したり表現を置き換えたりして記載していますので,ご了承下さい。草案の詳細はこちら↓
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf

第12条:憲法が保障する自由と権利について,「公共の福祉のために利用する責任を負う」を「公益及び公の秩序に反してはならない」に変更。

第14条:「法の下の平等」に「障害の有無によって差別されない」を追加。

第15条-第3項:参政権対象者に「日本国籍を有する者」を追加。

第18条:「奴隷的拘束を受けない」「その意に反する苦役に服させられない」等の表現を「社会的又は経済的関係において身体を拘束されない」に変更。

第19条の2:「個人情報の不当取得の禁止」を追加。

第20条-第3項:国や地方公共団体の宗教教育や宗教的活動の禁止に関して,「ただし,社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては,この限りでない」を追加。
→「社会的儀礼又は習俗的行為」というのは,何をどこまで想定しているんでしょうか。閣僚や国会議員が「みんなで靖国神社に参拝」した時の玉串料を公費で負担できるようにでもしたいんでしょうか。改正案の意図はわからないけど,歯止めがなくなりそうで,ちょっと危険な感じがします。

第21条-第2項:「表現の自由」に「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動や結社は認められない」を追記。
→前述の第12条の場合は「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に書き換えただけですが,この条文の場合は,「表現の自由」に対して「公益及び公の秩序を守る」を追加するもの。「この条文に敏感に反応し,拡大解釈を恐れて猛反発するのは一部勢力の人のみじゃん!」って考える人は,かの治安維持法をぜひ思い出して欲しいです。
 治安維持法は,条文を見る限り共産主義革命運動を取り締まるための法律であったことは明白。にもかかわらず,この法律は拡大解釈されて,宗教活動・右翼思想・自由主義運動など,政府批判となる活動はすべて弾圧の対象となっていったという暗い歴史があります。この草案の「公益及び公の秩序を害する」という表現は,治安維持法にあった「国体の変革または私有財産制度の否認」よりも遙かに広い範囲を指しており,治安維持法よりもさらに広い範囲の言論統制につながる可能性があるということであり,この草案は非常に危険と感じます。
【参考】治安維持法における処罰対象者(要点)
 国体の変革または私有財産制度の否認を目的として結社を組織した者(未遂を含む),これに加入した者,これの実行に関して協議した者,これの実行を煽動した者,これが目的で騒乱・暴行その他生命・身体または財産に害を加えるための犯罪を煽動した者,これが目的で金品その他の財産上の利益を供与またはその申込みもしくは約束をした者。

第21条の2:「国政上の行為に関する国の国民への説明義務」を追加。

第24条:「家族は,社会の基礎的な単位として尊重される。家族は,互いに助け合わなければならない」を追記。
→前半の「・・・尊重される」はいいとしても,後半の「家族は互いに助け合わなければならない」は,道徳的価値観の話であり,まったく余計なお世話。憲法に書くようなことではなく,古い価値観の押しつけであり,キモいです。親子や夫婦で喧嘩したら,憲法違反なんですか? たとえば家族のDVに苦しめられている人は,相手が家族であっても助け合う必要はありませんよ。

第24条第2項:「婚姻は両性の合意に基づいて成立」(現行どおり)
→この項は現行の憲法から変更はありませんが,あえてコメントします。
 婚姻については「両性の」と憲法に明確に記載されていたんですね。うっかりしていました。つまり,同性婚は現行の憲法で認められていないと解釈できます。この条文の「両性の合意」は「両者の合意」のようにぜひ改めて欲しい。たったそれだけでも,この草案の株は上がったと思うのに,残念です。まあ,選択的夫婦別姓や選択的同性婚すら認めようとしない政治家に,これを期待しても無理なんでしょう。

第25条の2:「国による環境保全の責務」を追加。

第25条の3:「国による在外国民の保護」を追加。

第25条の4:「国は犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮」を追加。
→国が犯罪被害者の人権や処遇に配慮するのはいいとして,なぜ犯罪被害者だけを特別に憲法に記載する必要があるのか理解できません。それを言ったら,事故の被害者とか,えん罪の受刑者(=被害者)とか,キリがないのでは?

第26条-第3項:「国は教育環境の整備に努めなければならない」を追加。

第28条-第2項:勤労者の団結権・団体交渉権に関して,「公務員については権利の一部又は全部を制限可能。この場合は公務員の勤労条件の改善に必要な措置を講じる」を追加。
→「公務員は通常の労働者とは別扱い」という以前に,現在は,民間会社での団結権・団体交渉権などは実質的にほとんど機能していないように見えるし,さらに非正規労働者にはそんな権利は存在していないのが現実。コメントしようがありません。

第29条-第2項:財産権について,「公共の福祉に適合するように」を「公益及び公の秩序に適合するように」に変更。また,知的財産権について追加。

第44条:議員と選挙人の資格について,「障害の有無で差別してはならない」を追加。

第47条:議員の選挙について,「各選挙区は人口を基本とし,行政区画・地勢等を総合的に勘案して定める」を追加。
→この条文は,「各選挙区の定数配分は人口比が原則だが,行政区画や地勢等の制約によって,必ずしも人口比にならなくてもいい」と解釈でき,国政選挙のたびに議員定数に関する違憲判決が出ているという問題を回避するための条文であり,許せません。
 僕としては,「議員一人あたりの有権者数が最大の選挙区の0.9倍未満の選挙区については,その議員の当選を無効にする」ぐらいの条文を追加して欲しい(有権者数の多い選挙区でなく少ない選挙区を無効にするというところがミソ)。また,「定数配分は有権者数によって自動的に配分する計算方式を導入する」とか,「議員自身が自分の選挙制度や定数配分を決めてはならない」なども追加して欲しい。とにかく,今の選挙制度や定数配分は腐りきっています。

第52条-第2項:「通常国会の会期は法律で定める」を追加。

第53条:いずれかの議院の4分の1以上の議員の要求があった時に開催する臨時国会について,「要求から20日以内に召集」を追加。
→それよりも,現行の憲法で,臨時国会を召集するのがなぜ内閣でなければならないのか,イマイチ理解できません。第6条で「国会の召集は内閣の進言によって天皇が召集」となっており,その関係のようですが,三権分立なんだから,臨時国会は国会だけの判断で開催すればいいのにと思います。
 ところで,余談ですが,国会は「招集」でなく「召集」なんですね。「召集」は,兵役の召集と国会議員の召集にだけ使用し,それ以外で人を集める時は「招集」となるらしい。

第54条:「衆議院の解散は内閣総理大臣が決定する」を追加。
→何を今さら・・・と思って,現行の憲法をよく読んでみたら,なんと,内閣が衆議院の解散を決めることは,国会の項にも内閣の項にも書かれておらず,第7条の「天皇の国事行為」のところにのみ書かれており,この条文にある国事行為は「内閣の助言と承認によって天皇が実施」とあり,したがって,「衆議院の解散は内閣が行う」ということだったんですね。

第56条:「両議員は,各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ,議事を開き議決することができない」を「両議員は,各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ,議決することができない」に変更。
→要するに,「議決については現行どおり3分の1以上の出席が必要だが,議事を開くには出席議員数の制限はない」と読み取れます。変更の意図はわかりませんが,本当にそんなんでいいの?

第63条-第2項:大臣の国会への出席義務について,「職務の遂行上特に必要がある場合は不要」を追加。

第64条の2:「政党」に関する事項を追加。

第65条:「行政権は内閣に属する」に「この憲法に特別の定めのある場合を除き」を追加。

第65条-第2項:「大臣は文民でなければならない」を「大臣は現役の軍人であってはならない」に変更。
→現行憲法の「文民」の定義に諸説あり,「かつての軍人以外に自衛隊員も含むのか?」「退役した軍人は文民?」などがはっきりしていないため,それを明確化したものと解釈します。たとえば,2014年の都知事選に立候補して落選し,最近何かとお騒がせの,あの元軍人候補が大臣になりうるのかどうか ということ。それにしても,あの人が61万票も獲得って,東京の有権者 コワすぎ!
 それはともかく,「軍人」ということばがこの条文にだけ出てきますが,軍人というのは「国防軍に所属する職員全員」ということ? きちんと定義しておかないと結局またもめるのでは?

第70条-第2項:「内閣総理大臣が欠けた時,あらかじめ指定した国務大臣が臨時にその職務を行う」を追加。

第72条:内閣総理大臣の職務に「行政各部を指揮監督し総合調整を行う」と「最高指揮官として国防軍を統括する」を追加。
→「行政各部を指揮監督」に加えて,さらに「最高指揮官として国防軍を統括」を書いているということは,国防軍というのは「行政各部」に所属しない別組織ということなんでしょうか。よくわかりません。

第73条:内閣の職務に「法律案を作成」を追加。また,「政令には罰則を設けることができない」を「政令は,義務を課したり権利を制限したりはできない」に変更。
→第72条にも「内閣は議案を国会に提出し」とあり,内閣が法律案を作成するのは一向に構いませんが,法律を作るのはあくまで国会議員の仕事ですので,国会議員さん,お忘れないように!

 今回はここまで。次回で最終です。次回のメインは緊急事態条項など。

関連ブログ:
 日本国憲法改正草案(前編)(2016年5月14日)

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2016年5月14日 (土)

日本国憲法改正草案(前編)

 自民党が2012年に発表した「日本国憲法改正草案」。これまで,僕はこんな草案はまったく気にとめていませんでしたが,この夏の参院選の争点になるかもという噂があり,ちょっとだけ真剣に読んでみたので,主な改正点と気になった点などをコメントしておきたいと思います。ただし,僕の憲法に関する知識は,義務教育プラス理系大学の教養課程程度で,法律の専門家でもないし法律を専門的に学んだわけでもありません。あくまで一素人の感想ということでご了承下さい。

 なお,改正箇所(青文字部)は要点のみを記載し,条文は必要に応じて簡略化したり表現を置き換えたりして記載しています。草案の詳細はこちら↓
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf
 現行の日本国憲法との相違点がわかるように対照表の形式になっています。

前文:全面改定

第1条:天皇を「象徴」から「元首」に変更。
→ん? 明治憲法に逆戻り? とも思いましたが,そもそも現在の日本の「元首」って誰?・・・調べたところ,「天皇」「内閣総理大臣」「いない」など,いろんな説があるようで,対外的な実質的「元首」としての職務は,ケースに応じて天皇が行ったり内閣総理大臣が行ったりしているそうです。新たに「元首」を定義する必要があるのかはよくわかりません。ただ,実質的に政治的権能を有しない天皇を「元首」と呼ぶのにはちょっと違和感を覚えます。

第3条:「国旗は日章旗とし,国歌は君が代とする。日本国民は,国旗及び国歌を尊重しなければならない」を追加。
→う~~ん,そうですか。憲法に入れたいですか。
 国旗と国歌に関しては「国旗及び国歌に関する法律」に規定されており,この法律の「別記」に,国旗の具体的デザインや国歌の楽譜が掲載されています。具体的なデザインや楽譜を憲法に記載せず,単に「日章旗」「君が代」と書くだけで一意性が保てるのか,ちょっと疑問。憲法としては「国旗・国歌は法律で定める」程度でいいんではないでしょうか。
 ちなみに,「国旗及び国歌に関する法律」には国旗のサイズ(縦横比率や日章部分の割合など)が厳密に定義されているので,これなら一意性が確保できています。ただ,日章部の色が「紅色」としか書かれておらず,これでは不確定。エンジニア的には,マンセル記号や24ビットRGBコードなどで定量的に表現して欲しいものです。
 あと,草案の第2項に「日本国民は,国旗及び国歌を尊重しなければならない」と書かれていますが,こう書いて国民に強制しないと国旗や国歌が尊重されないというのは悲しいこと。ちなみに僕は,日本だけでなく,どの国のものでも(アメリカでも中国でも北朝鮮でも),国旗や国歌はその国のシンボルであり「尊重」していますよ。それが大人としてのマナーなので。

第4条:「元号は皇位の継承があったときに制定する」を追加。
→う~~ん,やっぱりこれも憲法に入れたいですか。
 ちなみに,元号の制定を憲法に入れるかどうかとは別の話として,どう考えても西暦の使用を止めるわけにはいかないのが現実であり,日本でしか通用しない年号を西暦とは別に設けることの合理的理由が僕には理解できません。また,「ある日突然」年号が変わるのは,日常生活面でもシステム的にも非常に不便。ということで,僕は個人的には原則として西暦を使用するようにしています。僕が長年勤めていた会社でも,社内ではすべて西暦で統一していました。それでも,対外的(特に役所相手など)には元号記載がスタンダードで元号の使用を強制されており,結局は「元号は使いたい人だけ使えばいい」とはなっていないのが現実。ほんと不便です。

第5条~第7条:天皇の国事行為について,「内閣の助言と承認を必要とし,内閣が責任を負う」とあるのを「内閣の進言を必要とし,内閣が責任を負う」に変更。また,「国や公共団体などが主催する式典への出席や公的な行為を行う」を追加。
→「助言」が「進言」に変わっています。「助言」というのは「上の者が下の者に教える」という意味合いがあるため,天皇に対しては「進言」の方が適切ということなのでしょう。「内閣の承認が必要」が削除されているものの,「天皇のすべての国事行為には内閣の進言が必要」とあり,天皇が独断で主体的に国事行為を行うことはできないという点で,現行憲法と同等なのかと解釈します。
 なお,天皇の国事行為について,この際なので,形式上のものは内閣や国会が直接行うようにして,天皇が行う国事行為は儀式などに限定してもいいんではないでしょうか。

第9条:「戦争を放棄し,国際紛争を解決する手段としての武力行使を永久に放棄」を「戦争を放棄し,国際紛争を解決する手段としては武力行使を用いない」に変更。
→「武力行使を永久に放棄」を「武力行使を用いない」に変更。この変更をめっちゃ気にする人もいそうですが,戦争を放棄することに変わりはないので,僕はあまりこだわりません。ただ,「武力行使を永久に放棄」→「武力行使を用いない」→「武力行使を用いる」のように,段階的に武力行使を合法化しようとしているようにも見え,ちょっと気になるところ。

第9条-第2項:「前項の目的を達するため戦力は保持しない。国の交戦権は認めない」を「前項の規定は自衛権の発動を妨げるものではない」に変更。
→違憲という意見がある(笑) 自衛隊を合法化するための条文変更ですね。ちなみに,現在の自衛隊は,明らかに自国防衛の域を超える「軍隊」であり,現行の憲法に照らせば違憲であることは間違いありません。どこをどう解釈すれば自衛隊が合憲で集団的自衛権の行使まで可能になってしまうのか,僕には理解できません。
 こういうことを言うと「自衛隊を違憲といいながら自衛隊の災害救助の世話になるのはけしからん!」みたいなアホなことを言う人がいますが,災害救助や必要最小限の防衛に関して違憲と言っているわけではなく,災害救助や防衛には不要な過剰装備等について違憲と言っているだけですので,念のため。
 いずれにしても,改正案に自衛権を明記することには反対しませんが,「戦争は放棄」と明言している限り,自衛を超える軍備については認めないということをきちんと明記した方がいい。そうでないと,拡大解釈の連続で際限なく軍備が拡張されるのは目に見えています。

第9条の2:「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍の保持」を追加。

第9条の2-第2項:「国防軍は国会の承認他の統制に服する」を追加

第9条の2-第3項:「国防軍は第9条第1項の活動の他,国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調する活動,および国民の生命・自由を守るための活動を行うことができる」を追加。
→国の平和や国民の安全を確保する目的以外に「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調する活動」も行えるとしている。たとえばアメリカが戦争していて,その戦争が「国際社会の平和と安全を確保するため」と判断すれば(誰が?),国防軍は世界中のどこででも活動ができるということ。昨年法制化された集団的自衛権が違憲だったのを合憲化しようということなんですね。順序が逆だろ!って思いますが。

第9条の2-第4項:「国防軍の組織等については法律で定める」を追加。

第9条の2-第5項:「国防軍に属する軍人や公務員がその職務や機密に関する裁判を行うために,国防軍に審判所を置く」を追加。
→裁判所とは別の司法組織を国防軍の中に設けるということで,いわゆる軍法会議(軍事裁判所)のことでしょう。「戦争は放棄する」「武力行使は用いない」といいながら,軍法会議を設けることの必要性がイマイチ理解できません。

第9条の3:「国は領土・了解・領空を保全し,資源を確保しなければならない」を追加。

 長くなったので,今回はここまで。

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