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2014年1月19日 (日)

高値発注?

 1月9日の朝日新聞トップに出ていた記事。(抜粋)

【東電工事,なお高値発注 2~5倍の例も 専門家チーム調査】

 東京電力が発注する工事の価格が,福島第一原発事故の後も高止まりしていることが,東電が専門家に委託した調達委員会の調べでわかった。今年度の原発工事などで,実際にかかる費用の2~5倍の価格で発注しようとするなどの事例が多数見つかった。東電は新再建計画でコスト削減の徹底を進める方針だが,体質は依然として改まっていない。調達費用の高止まり分は電気料金に上乗せされ,利用者が負担している。
 ある発電所の工事では,実際の人件費が1日1人あたり1.5万円だったにもかかわらず,受注側の見積もりが3.1万円の例があった。東電から大手メーカー,子会社,下請け企業へと工事発注を繰り返し,各社が合計1.6万円を利益や手数料として確保した結果だ。実際には1日1.2万円の人件費でできる工事なのに,受注側の見積もりの4.9万円で契約しようとした事例もあった。
 こうした工事は東電の関連会社が担うことが多く,事実上の「地域独占」が続いてきた。今年度の配電工事は6割をグループ企業の関電工に発注。残りの4割は地域ごとに,東電と関係の深い「東京電力配電工事協力会」に所属する企業と随意契約していた。

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 この記事を読んで「東電けしからん!」と思う人が多いのか少ないのかは不明ですが,僕の正直な感想は,「人件費が1日1人あたり1.5万円って,いったいいつの時代の話?」「1人1時間あたりの金額の間違い?」ってとこでしょうか。電力会社が発注する工事といっても多種多様で一概には言えませんが,普通に考えて「1日1人あたり1.5万円」というのは常識外に低い価格設定だと思います。

 ちなみに,国税庁が発表しているサラリーマンの平均年収は以下のとおり。
  2006(H18)年度:435万円
  2007(H19)年度:437万円
  2008(H20)年度:430万円
  2009(H21)年度:406万円
  2010(H22)年度:412万円
  2011(H23)年度:409万円
  2012(H24)年度:408万円

 一方,厚生労働省の調査によると,労働者の年間総実労働時間は以下のとおり。
  2006(H18)年度:1,842時間
  2007(H19)年度:1,850時間
  2008(H20)年度:1,836時間
  2009(H21)年度:1,768時間
  2010(H22)年度:1,798時間
  2011(H23)年度:1,747時間
  2012(H24)年度:1,765時間

 これらの数値から計算すると,1時間あたりの給与(賞与を含む)は以下となります。
  2006(H18)年度:2,362円
  2007(H19)年度:2,362円
  2008(H20)年度:2,343円
  2009(H21)年度:2,296円
  2010(H22)年度:2,291円
  2011(H23)年度:2,341円
  2012(H24)年度:2,312円

 つまり,ざっくり1時間あたり約2,300円。すなわち1日=8時間とすると1日あたりの給与は約18,400円ということになります。これは直接労働者に支払う賃金(賞与を含む)であり,雇用者側としては,これ以外に退職金の引当金や厚生年金・健康保険などの社会保険費用,福利厚生費などが必要。もちろん家賃や光熱費などの事務所経費や運営費も必要。さらに営業・経理・総務などの間接部門費や広告宣伝費なども必要。そして企業としては当然ある程度の利益を上乗せするでしょう。会社規模等によって異なるものの,これらを加味すると,普通に考えれば,1人1日あたりの給与の2~3倍かそれ以上の見積りになるのは当然です。

 工事業者としては,これらの費用はすべて工事の発注側に支払ってもらう必要があり,他に誰かが負担してくれるわけではありません。つまり,1日あたりの見積りが「3.1万円」とか「4.9万円」とかいうのは,決して高いとは言えず,極めて正当でリーズナブルな金額だと思います。

 記事によると,「東京電力調達委員会」というのは,実質国有化された東電が経営改革の一環として2012年11月に設置したもので,外部コンサルタントの委員で構成し,東電からもオブザーバーが参加。事務局は東電や政府の原子力損害賠償支援機構などから構成され,1件10億円以上の資材購入や工事発注について,調達先や金額をチェックしているとか。委員会にこれだけのメンバーがそろっていながら,工事に実際にかかるコストに対する認識が甘いのにはあきれます。

 また,「実際の費用が1.5万円/日なのに中間マージンが上乗せされて3.1万円/日の見積り」のように,中間業者が何もせずにピンハネしているかのような表現にも違和感を覚えます。元請業者は何もせずに利益を上乗せしているわけでなく,大規模工事に必要な施工管理を実施しているはず。もし元請が本当にピンハネしていると考えるなら,最初から工事を細切れにして三次・四次の下請業者に直接発注して支払額を下げればいいだけです。発注側にそれができる能力がないから比較的信頼できる元請メーカーに一括発注しているだけのことです。

 ということで,この新聞記事を書いたメディアも「東電調達委員会」なるメンバーも,工事コストの実態についてあまりわかってないなーという印象でした。

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