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2013年12月23日 (月)

特定秘密保護法

 今年も残りわずかとなりました。流行語大賞に選ばれなかったのが不思議なぐらいお騒がせだった「特定秘密保護法(案)」について,ちょっと書いておきたいと思います。

 法律の全文を,このブログの一番下に掲載しておきました。法律を作った国会議員の方々は,もちろん全文をくまなくきちんと読んでおられる筈ですが,一般人にとっては長すぎて難解で,とても読み切れるものではありません。法律って一つの文がなんでこんなに長くてわかりにくいんでしょう。法律の条文をWordの校正機能にかけるとエラーがいっぱい出るので笑えます。特に「助詞の連続」という指摘がめちゃ多いです。ビジネスの世界でこんな文書を書いたら間違いなく失格です。

 そんなわかりにくい条文でも,まじめに読むとけっこう怪しげな箇所があります。一例を挙げると,第12条第2項の一にテロ活動の定義が書かれています。この条文では,「テロリズム(政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう。同表第四号において同じ。)」となっています。すなわち,「政治上その他の主義主張に基づき国家若しくは他人にこれを強要し」たら,それはすなわちテロということなんです(「又は」以降の部分は「and」でなく「or」条件なので,強要しただけでテロということになります)。

 たとえばデモで,「政府は××せよ~!」みたいなことを命令調で連呼したら,「政府に対して強要した」と見なされる可能性があります。あの自民党の石波氏が「デモは本質的にテロと同じ」と口を滑らせて批判を浴び,発言を訂正しましたが,石波氏の発言は何も間違っていない。特定秘密保護法をわかりやすく解説してくれただけなんです。したがって,デモでは命令調で言わずに「××して下さいね~」と優しく言う必要があります。今後デモに参加する人は注意しましょう。

 いずれにしても,法律の条文は難解です。文書読解力が乏しかったり時間がなかったりする一般人が法律の内容を理解するには,どうしても報道されている内容に頼らざるを得ません。ということで,代表例として,この法律に関する各新聞の社説を見てみましょう。法律が成立した翌日(12月7日)の各紙の社説を簡単に抜粋すると,以下のような内容でした。(いずれも各紙のウェブサイトより)

1.朝日新聞
 近代の民主主義の原則を骨抜きにし,古い政治に引き戻すことにつながる。
 安倍政権は,憲法の精神や民主主義の原則よりも,米国とともに戦える体制づくりを優先しているのではないか。
 秘密保護法はいらない。国会が成立させた以上,責任をもって法の廃止をめざすべきだ。

2.毎日新聞
 国の安全保障にかかわる情報を秘密にし,近づこうとする人を厳しく取り締まるのがこの法律の根幹だ。民主主義を否定し,言論統制や人権侵害につながる法律を私たちは容認するわけにはいかない。制度導入を主導してきた安倍晋三首相と政権与党に,誤った政策だと強く指摘する。

3.東京新聞
 選挙で公約しなかったり,国会の場で約束しなかったことを強行するのは,有権者に対するだまし討ちにほかならない。
 特定秘密保護法の成立を強行することは,民主主義を愚弄するものだとなぜ気付かないのか。自民党はそこまで劣化したのか。

4.読売新聞
 日本にもようやく米英など他の先進国並みの機密保全法制が整った。
 米国はじめ各国から重要な情報を入手し,連携を強めねばならない。それには,秘密保護への信頼を高めることが不可欠だ。
 審議の中で戦前,思想犯の弾圧に用いられた治安維持法になぞらえた批判まで出たのには驚く。戦後の民主主義国家としての歩みや政治体制,報道姿勢の変化を無視した暴論と言うほかなかろう。

 各紙の社説の全文を,本ブログの下の方に転載しておきました。なお,産経と日経については,社説を掲載したページにアクセスできなかったので省略します。

 この法律が「秘密」を保護するためのものであり,報道機関としては「メディアの知る権利,報道する権利」に敏感にならざるを得ないのは当然で,勢い批判的な論調になるのは理解できます。にもかかわらず,さすがに読売の論調だけは他紙から突出しており,与党/政府の立場を一貫して擁護しています。まるで政府広報か自民党の機関誌。マジでキモイです。過激な反日教育を受けて育った某国の若者と同様に,読売だけを読んで育った日本の若者が将来どうなるのか,ちょっと空恐ろしいです。

 僕はこの法律の全文をきちんと読んで理解したわけではないので,(読売以外の)メディアが批判している内容を無条件に受け入れているわけではありません。むしろ,「知る権利」と偏狭な正義感をかざして傍若無人にふるまったり,実名報道により個人のプライバシーを徹底的に暴いたりするようなメディアは大嫌いです。

 また,ヘイトスピーチは気分が悪くなるし,右翼の街宣車は不愉快だし,中身が無く名前だけを連呼する選挙運動カーも大迷惑です。個人的には,「表現の自由」には制限を設けてこういうのこそ排除して欲しいのが本音ですが,残念ながらこの特定秘密保護法では,これらはどれも取り締り対象ではありません。

 それに,法律の善し悪しはともかく,郵政民営化やTPP参加などと同様に,結局はこの法律もまた「アメリカのため」ではないかという疑念がぬぐえません。また,あれだけ強引なやり方で成立させたのに,成立したとたんに「反省しています」と言う安倍総理の会見には,マジでむかつきました。

 多くの国民は,法律の内容が多少怪しくて危険だったとしても,「北朝鮮とは違うし,表現や言論の自由が確立した今の日本が戦時中のように戻るわけがない」という感覚で高をくくっているかも知れませんが,それは歴史を知らなすぎると思います。治安維持法の時代は70年近く前のことですが,隣国の韓国はほんの少し前まで「物言えぬ」恐ろしい国でした。現大統領の父親の朴大統領が暗殺されるまでは,北朝鮮や戦時中の日本並みに厳しい言論統制がしかれていたことは記憶に新しいです。すべて法律次第であり,日本が以前の韓国のようにならないという保証はありません。

 また,今の人は「国家権力の怖さ」をあまり感じていない人が多いと思われます。今の法律下でも,国家権力が狙った人に対しては,警察官などの公務員の体に触れただけで公務執行妨害容疑で逮捕し,身柄を拘束することができます。

 かつてのスパイ防止法案が自民党内の反対もあって廃案になったことと比較し,「最近の自民党はおかしい。昔のように良識ある議員がいない」みたいな報道もありましたが,それはちょっと違うでしょう。日本の政治は基本的に政党政治であり,議員個人はその政党の国会勢力を構成するための頭数であり,有権者は個人の考えでなく政党の方針に対して投票していると考えるのが自然です。党の方針や公約とは無関係に議員個人が勝手な行動をしたら,有権者は何を基準に投票すればいいのかわからなくなります。(あくまで僕の個人的な考えに基づく投票行動です)

 ただし,これは,この法律(法案)が与党の公約にきちんと掲げられていた場合の話。自民党の(自民党に限らず)選挙公約なんて僕は読まないので知りませんでしたが,報道によると,どうやらこの法案は前回の選挙公約では触れられていなかったらしい。

 重要な法律を公約なしに成立させることは,緊急性がある場合を除いて許されないことだと思います(この法律に限らず)。この法律を批判している人は,法律の中身を批判するだけでなく,まずはこの点を(選挙公約違反である点を)きちんとただすべきなのに,それが不十分だったように見えました。

 また,法律は「生きもの」であり,成立した法律でも反対ならまた廃止を主張すればいいのに,それがきちんとできていない野党が多いと感じます。たとえば,かつての安倍政権時に成立した改正教育基本法。民主党などの野党はさんざん反対していたのに,民主党が政権を取っても,元に戻すこともしなかったし改正もしなかった。法律は一旦成立したら終わりとでも思っているんでしょうか。

2013年12月7日の各紙の社説(各紙のウェブサイトから転載)

【朝日新聞】秘密保護法成立 憲法を骨抜きにする愚挙

 特定秘密保護法が成立した。
 その意味を、政治の仕組みや憲法とのかかわりという観点から、考えてみたい。
 この法律では、何を秘密に指定するか、秘密を国会審議や裁判のために示すか否かを、行政機関の長が決める。
 行政の活動のなかに、国民と国会、裁判所の目が届かないブラックボックスをつくる。その対象と広さを行政が自在に設定できる。
 都合のいい道具を、行政が手に入れたということである。領域は、おのずと広がっていくだろう。
 憲法の根幹である国民主権と三権分立を揺るがす事態だと言わざるをえない。
 近代の民主主義の原則を骨抜きにし、古い政治に引き戻すことにつながる。
 安倍政権がめざす集団的自衛権行使の容認と同様、手続きを省いた「実質改憲」のひとこまなのである。

■外される歯止め

 これまでの第2次安倍政権の歩みと重ね合わせると、性格はさらにくっきりと浮かび上がってくる。
 安倍政権はまず、集団的自衛権に反対する内閣法制局長官を容認派にすげ替え、行政府内部の異論を封じようとした。
 次に、NHK会長の任命権をもつ経営委員に、首相に近い顔ぶれをそろえた。メディアの異論を封じようとしたと批判されて当然のふるまいだ。
 そのうえ秘密保護法である。
 耳障りな声を黙らせ、権力の暴走を抑えるブレーキを一つひとつ外そうとしているとしかみえない。
 これでもし、来年定年を迎える最高裁長官の後任に、行政の判断に異議を唱えないだろう人物をあてれば、「行政府独裁国家」への道をひた走ることになりかねない。
 衆参ねじれのもとでの「決められない政治」が批判を集めた。だが、ねじれが解消したとたん、今度は一気に歯止めを外しにかかる。はるかに危険な道である。
 急ぎ足でどこへ行こうとしているのだろう。
 安倍政権は、憲法の精神や民主主義の原則よりも、米国とともに戦える体制づくりを優先しているのではないか。
 中国が力を増していく。対抗するには、米国とがっちり手を組まなければならない。そのために、米国が攻撃されたら、ともに戦うと約束したい。米国の国家安全保障会議と緊密に情報交換できる同じ名の組織や、米国に「情報は漏れない」と胸を張れる制度も要る……。
 安倍首相は党首討論で、「国民を守る」ための秘密保護法だと述べた。その言葉じたい、うそではあるまい。

■権力集中の危うさ

 しかし、それは本当に「国民を守る」ことになるのか。
 政府からみれば、説明や合意形成に手間をかけるより、権力を集中したほうが早く決められる、うまく国民を守れると感じるのかもしれない。
 けれども情報を囲い込み、歯止めを外した権力は、その意図はどうあれ、容易に道を誤る。
 情報を公開し、広く議論を喚起し、その声に耳を傾ける。行政の誤りを立法府や司法がただす。その、あるべき回路を閉ざした権力者が判断を誤るのは当然の帰結なのだ。
 何より歴史が証明している。
 戦前の日本やドイツが、その典型だ。ともに情報を統制し、異論を封じこめた。議会などの手続き抜きで、なんでも決められる仕組みをつくった。政府が立法権を持ち憲法さえ無視できるナチスの全権委任法や、幅広い権限を勅令にゆだねた日本の国家総動員法である。
 それがどんな結末をもたらしたか。忘れてはならない。

 ■国会と国民の決意を

 憲法は、歴史を踏まえて三権分立を徹底し、国会に「唯一の立法機関」「国権の最高機関」という位置づけを与えた。
 その国会が使命を忘れ、「行政府独裁」に手を貸すのは、愚挙というほかない。
 秘密保護法はいらない。国会が成立させた以上、責任をもって法の廃止をめざすべきだ。
 それがすぐには難しいとしても、弊害を減らす手立てを急いで講じなければならない。
 国会に、秘密をチェックする機関をつくる。行政府にあらゆる記録を残すよう義務づける。情報公開を徹底する。それらは、国会がその気になれば、すぐ実現できる。
 国民も問われている。こんな事態が起きたのは、政治が私たちを見くびっているからだ。
 国民主権だ、知る権利だといったところで、みずから声を上げ、政治に参加する有権者がどれほどいるのか。反発が強まっても、次の選挙のころには忘れているに違いない――。
 そんなふうに足元をみられている限り、事態は変わらない。
 国民みずから決意と覚悟を固め、声を上げ続けるしかない。

【毎日新聞】特定秘密保護法成立 民主主義を後退させぬ

 「情報公開は民主主義の通貨である」とは米国の著名な消費者運動家、ラルフ・ネーダー氏の言葉である。国の情報公開が市民に政治参加への材料を提供し、民主的な社会をつくっていくことに貢献するとの意味が込められているという。
 日本でも戦後、国民の知る権利や政府の説明責任という概念が人々の間に徐々に広がり、国の情報は国民全体の財産であるとの考え方が浸透した。欧米から大きく後れをとったとはいえ、2001年の情報公開法、11年の公文書管理法の施行で、行政情報に誰もが自由にアプローチできる仕組みが整った。

◇息苦しい監視社会に

 ところが、そうした民主主義の土台を壊しかねないのが、参院本会議で成立した特定秘密保護法である。
 国の安全保障にかかわる情報を秘密にし、近づこうとする人を厳しく取り締まるのがこの法律の根幹だ。民主主義を否定し、言論統制や人権侵害につながる法律を私たちは容認するわけにはいかない。制度導入を主導してきた安倍晋三首相と政権与党に、誤った政策だと強く指摘する。
 それにしても、目を覆うばかりの政府・与党の乱暴な国会運営だった。今国会の成立に固執して拙速に審議の幕を下ろし、採決を強行した。野党の一部を取り込むために採決直前になって次々と新しい組織の設置を口約束するドタバタぶりだった。その手法は、与野党が時間をかけ熟議を重ねて妥協を図り、多数決は最後の手段とすべき議会制民主主義とは大きくかけ離れたものだ。
 強行成立したこの日を、法律の中身と成立手続きの両面で、民主主義が損なわれた日として記憶にとどめたい。
 私たちはこれまで、この法律が抱えるさまざまな問題を懸念し、廃案を求めて訴えてきた。
 なによりも、国の安全保障に著しい支障を与える恐れがあるとの理由をつければ、行政機関は大量の情報を特定秘密に指定することができ、国民は接することが不可能になる。情報を公開するという原則をゆがめるものだ。「何が秘密かも秘密」にされ、個々の指定が妥当かどうかのチェックは国会も司法も基本的に及ばない。そのため、行政は恣意(しい)的な指定が可能になり、不都合な情報も隠すことができてしまう。
 不正アクセスなどの違法行為で特定秘密を取得した人だけでなく、漏えいや取得をめぐる共謀、そそのかし、あおり行為も実際に情報が漏れなくても罪に問われる。取り締まり対象は報道機関に限らず、情報を得ようとする市民全体に向けられる。
 防衛、外交分野だけでなく、スパイ活動防止とテロ活動防止に関する捜査や調査の情報も特定秘密の対象になるため、公安警察の監視活動が大手を振ってまかり通り、歯止めが利かなくなる恐れもある。それは監視社会の到来を招き、市民生活を息苦しいものにするだろう。
 特定秘密を取り扱う公務員らには漏えいによって最高懲役10年という厳罰が科され、未遂やうっかり紛失するような過失も罰せられる。このため、報道機関などとの接触が萎縮することは確実だ。指定された特定秘密の中身に疑問を感じた公務員がいても、内部告発に踏み切ることは極めて困難になる。
 これほどの強い副作用をもたらす法律が施行されれば、私たちの社会は大きく変容してしまうだろう。

◇民意を問うべきだ

 特定秘密保護法は1年以内に施行される見通しだ。その前に、副作用を少しでも減らすための方策を講じなければならない。
 まず、情報公開のルールを確立することが先決だ。法案の修正で、特定秘密の指定期間が原則30年までと明記はされたが、内閣の承認があれば60年まで延長でき、しかも政令などで定める要件に合えばさらに延長が可能になる。これでは永久に秘密のままにされる可能性がある。
 そもそも、特定秘密が指定期間満了や指定解除となっても、それが公開に結びつく制度になっていない。国立公文書館に移管され、利用者の請求で公開される場合も想定されるが、大量に廃棄される懸念がある。どんな秘密もいずれは公開されるという明確なルールがあれば、行政側もいいかげんな指定はできず、公務員も歴史に堪えうる仕事をこなさなければとの責任感が増すはずだ。早急に公開の仕組みを整えるべきだ。
 指定の妥当性をチェックする機関も創設されるのか不透明だ。恣意的な指定を防ぐには監視機関の独立性と強い権限が担保される必要があり、それには法制化が不可欠だ。施行までに実現してもらわねば困る。
 しかし、こうした補強をいくら施したとしても、民主主義に反する制度を根本から変えることは不可能だと私たちは考える。国家機密を守るには、現行法の厳格な適用と情報セキュリティーの強化で十分対応が可能なはずだ。特定秘密保護法は廃止か全面的な見直しを求めたい。
 もともと選挙公約には上らなかった法律だ。日に日に国民から反対意見が強まった。政府・与党の横暴を忘れてはならない。民主主義を後退させないために、来たるべき国政選挙で民意を問うべきだ。

【東京新聞】秘密保護法が成立 民主主義を取り戻せ

 国会の荒涼たる風景に怒りを禁じ得ない。国民の代表である「国権の最高機関」で、民意が踏みにじられる異常さ。取り戻すべきは、民主主義である。
 いったい、この臨時国会は何だったのか。召集日の十月十五日を振り返る。安倍晋三首相は、所信表明演説で「この国会は、成長戦略の『実行』が問われる国会です」と強調していた。
 しかし、決意は、その後提出された特定秘密保護法の今国会成立に、いつの間にか塗り替わってしまう。与党の国会運営の強引さばかりが目についた。

◆公約で触れぬ瑕疵

 防衛・外交など特段の秘匿が必要な「特定秘密」を漏らした公務員らを厳罰に処す特定秘密保護法は、その内容はもちろん、手続き上も多くの瑕疵(かし)がある。
 まず、この法律は選挙で公約として掲げて、有権者の支持を得たわけではないということだ。
 首相らは同法を、今月四日に発足した国家安全保障会議の設置法と一体としてきた。
 しかし、昨年十二月の衆院選、今年七月の参院選の選挙公約で、自民党は会議の必要性は訴えたものの、特定秘密保護法にはひと言も触れていない。
 第二次安倍政権の発足後、国会では計三回、首相による施政方針、所信表明演説が行われたが、ここでも同法に言及することはなかった。
 選挙で公約しなかったり、国会の場で約束しなかったことを強行するのは、有権者に対するだまし討ちにほかならない。
 選挙公約に掲げて有権者に判断を仰ぎ、それを実行できたかどうか、次の選挙で評価を仰ぐのが、民主主義の健全なサイクルだ。
 特定秘密保護法の成立を強行することは、民主主義を愚弄(ぐろう)するものだとなぜ気付かないのか。自民党はそこまで劣化したのか。

◆国民を「奴隷」視か

 安倍内閣は国会提出前、国民から法案への意見を聴くパブリックコメントに十分な時間をかけず、反対が多かった「民意」も無視して提出に至った。
 国会審議も極めて手荒だ。
 同法案を扱った衆院特別委員会では、地方公聴会の公述人七人全員が法案への懸念を表明したにもかかわらず、与党は翌日、法案の衆院通過を強行した。
 「再考の府」「熟議の府」といわれる参院での審議も十分とは言えない。参院での審議時間は通常、衆院の七割程度だが、この法律は半分程度にすぎない。
 審議終盤、政府側は突然「情報保全諮問会議」「保全監視委員会」「情報保全監察室」「独立公文書管理監」を置くと言い出した。
 これらは公文書管理の根幹にかかわる部分だ。野党側の求めがあったとはいえ、審議途中で設置を表明せざるを得なくなったのは、当初提出された法案がいかに杜撰(ずさん)で、欠陥があったかを物語る。
 しかもこれらの設置は本来、法律などで定める必要があるが、法案修正には踏み込まなかった。参院で修正すれば、衆院で再び審議する必要があり、会期内成立が難しくなるからだろう。とにかく今国会成立ありきなのだ。
 弥縫(びほう)策がまかり通るのも国政選挙は当分ないと、安倍政権が考えているからだろう。今は国民の批判が強くても衆参ダブル選挙が想定される三年後にはすっかり忘れている。そう考えているなら国民をばかにするなと言いたい。
 人民が自由なのは選挙をする間だけで、議員が選ばれるやいなや人民は奴隷となる-。議会制民主主義の欠陥を指摘したのは十八世紀の哲学者ルソーだ。
 特定秘密保護法や原発再稼働に反対するデモを、石破茂自民党幹事長は「テロ」と切り捨てた。国民を奴隷視しているからこそ、こんな言説が吐けるのだろう。
 しかし、二十一世紀に生きるわれわれは奴隷となることを拒否する。有権者にとって選挙は、政治家や政策を選択する最大の機会だが、白紙委任をして唯々諾々と従うことを認めたわけではない。
 政治が自分たちの思いと違う方向に進もうとするのなら、声を上げるのは当然の権利であり、私たち言論機関には義務でもある。

◆改憲に至る第一歩

 強引な国会運営は第一次安倍政権でも頻繁だった。この政権の政治的体質と考えた方がいい。
 首相は集団的自衛権の行使、海外での武力行使、武器輸出などを原則禁じてきた戦後日本の「国のかたち」を根本的に変えようとしている。その先にあるのは憲法九条改正、国防軍創設だ。特定秘密保護法はその第一歩だからこそ審議に慎重を期すべきだった。
 日本の民主主義が壊れゆく流れにあったとしても、われわれは踏みとどまりたい。これから先、どんな困難が待ち構えていようとも、民(たみ)の力を信じて。

【読売新聞】秘密保護法成立 国家安保戦略の深化につなげよ

◆疑念招かぬよう適切な運用を

 日本にもようやく米英など他の先進国並みの機密保全法制が整った。
 外交・安全保障政策の強化につなげる一方で、「知る権利」が損なわれるという疑念を国民から抱かれぬよう、政府は運用に十分配慮しなければならない。
 安全保障に関わる機密情報を漏らした公務員らの罰則を強化する特定秘密保護法が6日深夜、参院本会議で自民、公明両党の賛成多数によって可決、成立した。
 与野党が激しく対立する中、衆院で賛成したみんなの党が与党の「強引な国会運営」を批判して退席した。極めて重要な法律が異例の事態で誕生したのは残念だ。

◆統一的なルール明確に

 中国の防空識別圏設定の動きが象徴するように、日本の安全保障環境は厳しさを増している。
 米国はじめ各国から重要な情報を入手し、連携を強めねばならない。それには、秘密保護への信頼を高めることが不可欠だ。
 既に国家公務員法の守秘義務や1954年の日米相互防衛援助協定に伴う特別防衛秘密、2001年の改正自衛隊法による防衛秘密などの法制はある。
 それでも十分ではなく、日本は情報が漏れやすいと指摘されてきた。今回、防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止に関する、政府全体の統一的かつ本格的な秘密保全ルールが整ったと言える。
 今週発足した国家安全保障会議(日本版NSC)の情報収集と分析の能力を高めていく上でも、欠かせない法制度である。
 ところが、国民を守るための立法趣旨が軽んじられている。
 審議の中で戦前、思想犯の弾圧に用いられた治安維持法になぞらえた批判まで出たのには驚く。戦後の民主主義国家としての歩みや政治体制、報道姿勢の変化を無視した暴論と言うほかなかろう。
 安倍首相が「一般国民が特定秘密を知ることはあり得ない。ゆえに処罰されることはあり得ない」と答弁したように、普通の国民が対象となることはない。
 ただ、法案審議を通じ、政府に対する国民の不信感が増したことも否めない。政府は、秘密保護法の趣旨を国民に丁寧に説明し、理解を求めていくべきである。
 与党と維新の会やみんなの党との協議で、秘密指定対象がより絞られ、指定解除後の公開原則も明確になったことは評価できる。

◆知る権利とのバランス

 参院審議の最大の論点は、官僚が恣意(しい)的に秘密の範囲を拡大するのではないかという点だった。
 秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関として、首相は「保全監視委員会」を設けると約束した。菅官房長官も、内閣府に20人規模の「情報保全監察室」を発足させると言明した。政府側が次々と妥協を図ったと言える。
 第三者機関には実効性を持たせることが肝要だ。特に、警察庁や公安調査庁などテロやスパイ活動を取り締まる分野での秘密については、国民の不安が強いことに留意しなければならない。
 民主党は、政府内の組織では、機能を果たせないと言うが、民主党の提案するように与野党が指名した有識者による委員会で的確に検証できるのか、疑問だ。
 秘匿性の高い情報をどう扱うかという高度の判断は、政府の方針や国家戦略に基づいてこそ可能になる。情報漏えいリスクが高まる観点からも、政府内の監視組織の方が望ましい。
 最も懸念されるのは、公務員が懲役10年以下という厳罰を恐れ、報道機関の取材に対して萎縮しかねないことだ。秘密保護法を理由に情報を秘匿する恐れがある。
 個人情報保護法に対する過剰反応で、社会に必要な情報まで流通しにくくなった。その傾向に拍車をかけてはなるまい。

◆「原則公開」も問われる

 特定秘密の公開は原則30年後だ。延長する場合も一部例外を除き最長60年である。指定解除後の文書をどう公開・廃棄するのか、具体的な方策はこれからだ。
 秘密保護とセットであるべき情報公開制度にも問題がある。現行の制度では公開の幅が狭く、国民が情報にアクセスしにくい。
 特定秘密に関する訴訟が起きた場合、裁判官が対象文書を見ることができるようにしなければ裁判所としても役割を果たせない。
 国会の関与のあり方も、検討課題である。特定秘密の提供を受ける秘密会をどう運営するか、国政調査権との関係をどう考えるか、与野党は議論を深めるべきだ。
 公布後、1年以内に施行される。与野党は協議を重ね、より良い法制に仕上げてもらいたい。

◆特定秘密の保護に関する法律【朝日新聞デジタルより】

 6日に成立した特定秘密保護法の全文は次の通り。(【】内が衆院での主な修正箇所)

目次

第一章 総則(第一条・第二条)

第二章 特定秘密の指定等(第三条―第五条)

第三章 特定秘密の提供(第六条―第十条)

第四章 特定秘密の取扱者の制限(第十一条)

第五章 適性評価(第十二条―第十七条)

第六章 雑則(第十八条―第二十二条)

第七章 罰則(第二十三条―第二十七条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、我が国の安全保障【(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)】に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「行政機関」とは、次に掲げる機関をいう。

一 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関

二 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項及び第二項に規定する機関(これらの機関のうち、国家公安委員会にあっては警察庁を、第四号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては当該政令で定める機関を除く。)

三 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関(第五号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)

四 内閣府設置法第三十九条及び第五十五条並びに宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)第十六条第二項の機関並びに内閣府設置法第四十条及び第五十六条(宮内庁法第十八条第一項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、警察庁その他政令で定めるもの

五 国家行政組織法第八条の二の施設等機関及び同法第八条の三の特別の機関で、政令で定めるもの

六 会計検査院

第二章 特定秘密の指定等

(特定秘密の指定)

第三条 行政機関の長(当該行政機関が合議制の機関である場合にあっては当該行政機関をいい、前条第四号及び第五号の政令で定める機関(合議制の機関を除く。)にあってはその機関ごとに政令で定める者をいう。第十一条第一号を除き、以下同じ。)は、当該行政機関の所掌事務に係る別表に掲げる事項に関する情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法(昭和二十九年法律第百六十六号)第一条第三項に規定する特別防衛秘密に該当するものを除く。)を特定秘密として指定するものとする。【ただし、内閣総理大臣が第十八条第二項に規定する者の意見を聴いて政令で定める行政機関の長については、この限りでない。】

2 行政機関の長は、前項の規定による指定(附則第五条を除き、以下単に「指定」という。)をしたときは、政令で定めるところにより指定に関する記録を作成するとともに、当該指定に係る特定秘密の範囲を明らかにするため、特定秘密である情報について、次の各号のいずれかに掲げる措置を講ずるものとする。

一 政令で定めるところにより、特定秘密である情報を記録する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。以下この号において同じ。)若しくは物件又は当該情報を化体する物件に特定秘密の表示(電磁的記録にあっては、当該表示の記録を含む。)をすること。

二 特定秘密である情報の性質上前号に掲げる措置によることが困難である場合において、政令で定めるところにより、当該情報が前項の規定の適用を受ける旨を当該情報を取り扱う者に通知すること。

3 行政機関の長は、特定秘密である情報について前項第二号に掲げる措置を講じた場合において、当該情報について同項第一号に掲げる措置を講ずることができることとなったときは、直ちに当該措置を講ずるものとする。

(指定の有効期間及び解除)

第四条 行政機関の長は、指定をするときは、当該指定の日から起算して五年を超えない範囲内においてその有効期間を定めるものとする。

2 行政機関の長は、指定の有効期間(この項の規定により延長した有効期間を含む。)が満了する時において、当該指定をした情報が前条第一項に規定する要件を満たすときは、政令で定めるところにより、五年を超えない範囲内においてその有効期間を延長するものとする。

3 指定の有効期間は、通じて三十年を超えることができない。

4 前項の規定にかかわらず、政府の有するその諸活動を国民に説明する責務を全うする観点に立っても、なお指定に係る情報を公にしないことが現に我が国及び国民の安全を確保するためにやむを得ないものであることについて、その理由を示して、内閣の承認を得た場合(行政機関が会計検査院であるときを除く。)は、行政機関の長は、当該指定の有効期間を、通じて三十年を超えて延長することができる。【ただし、次の各号に掲げる事項に関する情報を除き、指定の有効期間は、通じて六十年を超えることができない。

一 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物(船舶を含む。別表第一号において同じ。)

二 現に行われている外国(本邦の域外にある国又は地域をいう。以下同じ。)の政府又は国際機関との交渉に不利益を及ぼすおそれのある情報

三 情報収集活動の手法又は能力

四 人的情報源に関する情報

五 暗号

六 外国の政府又は国際機関から六十年を超えて指定を行うことを条件に提供された情報

七 前各号に掲げる事項に関する情報に準ずるもので政令で定める重要な情報】

【5 行政機関の長は、前項の内閣の承認を得ようとする場合においては、当該指定に係る特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める措置を講じた上で、内閣に当該特定秘密を提示することができる。】

【6 行政機関の長は、第四項の内閣の承認が得られなかったときは、公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)第八条第一項の規定にかかわらず、当該指定に係る情報が記録された行政文書ファイル等(同法第五条第五項に規定する行政文書ファイル等をいう。)の保存期間の満了とともに、これを国立公文書館等(同法第二条第三項に規定する国立公文書館等をいう。)に移管しなければならない。】

7 行政機関の長は、指定をした情報が前条第一項に規定する要件を欠くに至ったときは、有効期間内であっても、政令で定めるところにより、速やかにその指定を解除するものとする。

(特定秘密の保護措置)

第五条 行政機関の長は、指定をしたときは、第三条第二項に規定する措置のほか、第十一条の規定により特定秘密の取扱いの業務を行うことができることとされる者のうちから、当該行政機関において当該指定に係る特定秘密の取扱いの業務を行わせる職員の範囲を定めることその他の当該特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める措置を講ずるものとする。

2 警察庁長官は、指定をした場合において、当該指定に係る特定秘密(第七条第一項の規定により提供するものを除く。)で都道府県警察が保有するものがあるときは、当該都道府県警察に対し当該指定をした旨を通知するものとする。

3 前項の場合において、警察庁長官は、都道府県警察が保有する特定秘密の取扱いの業務を行わせる職員の範囲その他の当該都道府県警察による当該特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める事項について、当該都道府県警察に指示するものとする。この場合において、当該都道府県警察の警視総監又は道府県警察本部長(以下「警察本部長」という。)は、当該指示に従い、当該特定秘密の適切な保護のために必要な措置を講じ、及びその職員に当該特定秘密の取扱いの業務を行わせるものとする。

4 行政機関の長は、指定をした場合において、その所掌事務のうち別表に掲げる事項に係るものを遂行するために特段の必要があると認めたときは、物件の製造又は役務の提供を業とする者で、特定秘密の保護のために必要な施設設備を設置していることその他政令で定める基準に適合するもの(以下「適合事業者」という。)との契約に基づき、当該適合事業者に対し、当該指定をした旨を通知した上で、当該指定に係る特定秘密(第八条第一項の規定により提供するものを除く。)を保有させることができる。

5 前項の契約には、第十一条の規定により特定秘密の取扱いの業務を行うことができることとされる者のうちから、同項の規定により特定秘密を保有する適合事業者が指名して当該特定秘密の取扱いの業務を行わせる代表者、代理人、使用人その他の従業者(以下単に「従業者」という。)の範囲その他の当該適合事業者による当該特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める事項について定めるものとする。

6 第四項の規定により特定秘密を保有する適合事業者は、同項の契約に従い、当該特定秘密の適切な保護のために必要な措置を講じ、及びその従業者に当該特定秘密の取扱いの業務を行わせるものとする。

第三章 特定秘密の提供

(我が国の安全保障上の必要による特定秘密の提供)

第六条 特定秘密を保有する行政機関の長は、他の行政機関が我が国の安全保障に関する事務のうち別表に掲げる事項に係るものを遂行するために当該特定秘密を利用する必要があると認めたときは、当該他の行政機関に当該特定秘密を提供することができる。ただし、当該特定秘密を保有する行政機関以外の行政機関の長が当該特定秘密について指定をしているとき(当該特定秘密が、この項の規定により当該保有する行政機関の長から提供されたものである場合を除く。)は、当該指定をしている行政機関の長の同意を得なければならない。

2 前項の規定により他の行政機関に特定秘密を提供する行政機関の長は、当該特定秘密の取扱いの業務を行わせる職員の範囲その他の当該他の行政機関による当該特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める事項について、あらかじめ、当該他の行政機関の長と協議するものとする。

3 第一項の規定により特定秘密の提供を受ける他の行政機関の長は、前項の規定による協議に従い、当該特定秘密の適切な保護のために必要な措置を講じ、及びその職員に当該特定秘密の取扱いの業務を行わせるものとする。

第七条 警察庁長官は、警察庁が保有する特定秘密について、その所掌事務のうち別表に掲げる事項に係るものを遂行するために都道府県警察にこれを利用させる必要があると認めたときは、当該都道府県警察に当該特定秘密を提供することができる。

2 前項の規定により都道府県警察に特定秘密を提供する場合については、第五条第三項の規定を準用する。

3 警察庁長官は、警察本部長に対し、当該都道府県警察が保有する特定秘密で第五条第二項の規定による通知に係るものの提供を求めることができる。

第八条 特定秘密を保有する行政機関の長は、その所掌事務のうち別表に掲げる事項に係るものを遂行するために、適合事業者に当該特定秘密を利用させる特段の必要があると認めたときは、当該適合事業者との契約に基づき、当該適合事業者に当該特定秘密を提供することができる。ただし、当該特定秘密を保有する行政機関以外の行政機関の長が当該特定秘密について指定をしているとき(当該特定秘密が、第六条第一項の規定により当該保有する行政機関の長から提供されたものである場合を除く。)は、当該指定をしている行政機関の長の同意を得なければならない。

2 前項の契約については第五条第五項の規定を、前項の規定により特定秘密の提供を受ける適合事業者については同条第六項の規定を、それぞれ準用する。この場合において、同条第五項中「前項」とあるのは「第八条第一項」と、「を保有する」とあるのは「の提供を受ける」と読み替えるものとする。

3 第五条第四項の規定により適合事業者に特定秘密を保有させている行政機関の長は、同項の契約に基づき、当該適合事業者に対し、当該特定秘密の提供を求めることができる。

第九条 特定秘密を保有する行政機関の長は、その所掌事務のうち別表に掲げる事項に係るものを遂行するために必要があると認めたときは、外国の政府又は国際機関であって、この法律の規定により行政機関が当該特定秘密を保護するために講ずることとされる措置に相当する措置を講じているものに当該特定秘密を提供することができる。ただし、当該特定秘密を保有する行政機関以外の行政機関の長が当該特定秘密について指定をしているとき(当該特定秘密が、第六条第一項の規定により当該保有する行政機関の長から提供されたものである場合を除く。)は、当該指定をしている行政機関の長の同意を得なければならない。

(その他公益上の必要による特定秘密の提供)

第十条 第四条第五項、第六条から前条まで及び第十八条第四項後段に規定するもののほか、行政機関の長は、次に掲げる場合に限り、特定秘密を提供するものとする。

一 特定秘密の提供を受ける者が次に掲げる業務又は公益上特に必要があると認められるこれらに準ずる業務において当該特定秘密を利用する場合(次号から第四号までに掲げる場合を除く。)であって、当該特定秘密を利用し、又は知る者の範囲を制限すること、当該業務以外に当該特定秘密が利用されないようにすることその他の当該特定秘密を利用し、又は知る者がこれを保護するために必要なものとして、イに掲げる業務にあっては附則第十条の規定に基づいて国会において定める措置、イに掲げる業務以外の業務にあっては政令で定める措置を講じ、かつ、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたとき。

イ 各議院又は各議院の委員会若しくは参議院の調査会が国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第百四条第一項(同法第五十四条の四第一項において準用する場合を含む。)又は議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(昭和二十二年法律第二百二十五号)第一条の規定により行う審査又は調査であって、国会法第五十二条第二項(同法第五十四条の四第一項において準用する場合を含む。)又は第六十二条の規定により公開しないこととされたもの

ロ 刑事事件の捜査又は公訴の維持であって、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第三百十六条の二十七第一項(同条第三項及び同法第三百十六条の二十八第二項において準用する場合を含む。)の規定により裁判所に提示する場合のほか、当該捜査又は公訴の維持に必要な業務に従事する者以外の者に当該特定秘密を提供することがないと認められるもの

二 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第二百二十三条第六項の規定により裁判所に提示する場合

三 情報公開・個人情報保護審査会設置法(平成十五年法律第六十号)第九条第一項の規定により情報公開・個人情報保護審査会に提示する場合

四 会計検査院法(昭和二十二年法律第七十三号)第十九条の四において読み替えて準用する情報公開・個人情報保護審査会設置法第九条第一項の規定により会計検査院情報公開・個人情報保護審査会に提示する場合

2 警察本部長は、第七条第三項の規定による求めに応じて警察庁に提供する場合のほか、前項第一号に掲げる場合(当該警察本部長が提供しようとする特定秘密が同号ロに掲げる業務において利用するものとして提供を受けたものである場合以外の場合にあっては、同号に規定する我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めることについて、警察庁長官の同意を得た場合に限る。)、同項第二号に掲げる場合又は都道府県の保有する情報の公開を請求する住民等の権利について定める当該都道府県の条例(当該条例の規定による諮問に応じて審議を行う都道府県の機関の設置について定める都道府県の条例を含む。)の規定で情報公開・個人情報保護審査会設置法第九条第一項の規定に相当するものにより当該機関に提示する場合に限り、特定秘密を提供することができる。

3 適合事業者は、第八条第三項の規定による求めに応じて行政機関に提供する場合のほか、第一項第一号に掲げる場合(同号に規定する我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めることについて、当該適合事業者が提供しようとする特定秘密について指定をした行政機関の長の同意を得た場合に限る。)又は同項第二号若しくは第三号に掲げる場合に限り、特定秘密を提供することができる。

第四章 特定秘密の取扱者の制限

第十一条 特定秘密の取扱いの業務は、当該業務を行わせる行政機関の長若しくは当該業務を行わせる適合事業者に当該特定秘密を保有させ、若しくは提供する行政機関の長又は当該業務を行わせる警察本部長が直近に実施した次条第一項又は第十五条第一項の適性評価(第十三条第一項(第十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知があった日から五年を経過していないものに限る。)において特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者(次条第一項第三号又は第十五条第一項第三号に掲げる者として次条第三項又は第十五条第二項において読み替えて準用する次条第三項の規定による告知があった者を除く。)でなければ、行ってはならない。ただし、次に掲げる者については、次条第一項又は第十五条第一項の適性評価を受けることを要しない。

一 行政機関の長

二 国務大臣(前号に掲げる者を除く。)

三 内閣官房副長官

四 内閣総理大臣補佐官

五 副大臣

六 大臣政務官

七 前各号に掲げるもののほか、職務の特性その他の事情を勘案し、次条第一項又は第十五条第一項の適性評価を受けることなく特定秘密の取扱いの業務を行うことができるものとして政令で定める者

第五章 適性評価

(行政機関の長による適性評価の実施)

第十二条 行政機関の長は、政令で定めるところにより、次に掲げる者について、その者が特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないことについての評価(以下「適性評価」という。)を実施するものとする。

一 当該行政機関の職員(当該行政機関が警察庁である場合にあっては、警察本部長を含む。次号において同じ。)又は当該行政機関との第五条第四項若しくは第八条第一項の契約(次号において単に「契約」という。)に基づき特定秘密を保有し、若しくは特定秘密の提供を受ける適合事業者の従業者として特定秘密の取扱いの業務を新たに行うことが見込まれることとなった者(当該行政機関の長がその者について直近に実施して次条第一項の規定による通知をした日から五年を経過していない適性評価において、特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者であって、引き続き当該おそれがないと認められるものを除く。)

二 当該行政機関の職員又は当該行政機関との契約に基づき特定秘密を保有し、若しくは特定秘密の提供を受ける適合事業者の従業者として、特定秘密の取扱いの業務を現に行い、かつ、当該行政機関の長がその者について直近に実施した適性評価に係る次条第一項の規定による通知があった日から五年を経過した日以後特定秘密の取扱いの業務を引き続き行うことが見込まれる者

三 当該行政機関の長が直近に実施した適性評価において特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者であって、引き続き当該おそれがないと認めることについて疑いを生じさせる事情があるもの

2 適性評価は、適性評価の対象となる者(以下「評価対象者」という。)について、次に掲げる事項についての調査を行い、その結果に基づき実施するものとする。

一 特定有害活動(公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動、核兵器、軍用の化学製剤若しくは細菌製剤若しくはこれらの散布のための装置若しくはこれらを運搬することができるロケット若しくは無人航空機又はこれらの開発、製造、使用若しくは貯蔵のために用いられるおそれが特に大きいと認められる物を輸出し、又は輸入するための活動その他の活動であって、外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全を著しく害し、又は害するおそれのあるものをいう。別表第三号において同じ。)及びテロリズム(政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう。同表第四号において同じ。)との関係に関する事項(評価対象者の家族(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この号において同じ。)、父母、子及び兄弟姉妹並びにこれらの者以外の配偶者の父母及び子をいう。以下この号において同じ。)及び同居人(家族を除く。)の氏名、生年月日、国籍(過去に有していた国籍を含む。)及び住所を含む。)

二 犯罪及び懲戒の経歴に関する事項

三 情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項

四 薬物の濫用及び影響に関する事項

五 精神疾患に関する事項

六 飲酒についての節度に関する事項

七 信用状態その他の経済的な状況に関する事項

3 適性評価は、あらかじめ、政令で定めるところにより、次に掲げる事項を評価対象者に対し告知した上で、その同意を得て実施するものとする。

一 前項各号に掲げる事項について調査を行う旨

二 前項の調査を行うため必要な範囲内において、次項の規定により質問させ、若しくは資料の提出を求めさせ、又は照会して報告を求めることがある旨

三 評価対象者が第一項第三号に掲げる者であるときは、その旨

4 行政機関の長は、第二項の調査を行うため必要な範囲内において、当該行政機関の職員に評価対象者若しくは評価対象者の知人その他の関係者に質問させ、若しくは評価対象者に対し資料の提出を求めさせ、又は公務所若しくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

(適性評価の結果等の通知)

第十三条 行政機関の長は、適性評価を実施したときは、その結果を評価対象者に対し通知するものとする。

2 行政機関の長は、適合事業者の従業者について適性評価を実施したときはその結果を、当該従業者が前条第三項の同意をしなかったことにより適性評価が実施されなかったときはその旨を、それぞれ当該適合事業者に対し通知するものとする。

3 前項の規定による通知を受けた適合事業者は、当該評価対象者が当該適合事業者の指揮命令の下に労働する派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第二条第二号に規定する派遣労働者をいう。第十六条第二項において同じ。)であるときは、当該通知の内容を当該評価対象者を雇用する事業主に対し通知するものとする。

4 行政機関の長は、第一項の規定により評価対象者に対し特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められなかった旨を通知するときは、適性評価の円滑な実施の確保を妨げない範囲内において、当該おそれがないと認められなかった理由を通知するものとする。ただし、当該評価対象者があらかじめ当該理由の通知を希望しない旨を申し出た場合は、この限りでない。

(行政機関の長に対する苦情の申出等)

第十四条 評価対象者は、前条第一項の規定により通知された適性評価の結果その他当該評価対象者について実施された適性評価について、書面で、行政機関の長に対し、苦情の申出をすることができる。

2 行政機関の長は、前項の苦情の申出を受けたときは、これを誠実に処理し、処理の結果を苦情の申出をした者に通知するものとする。

3 評価対象者は、第一項の苦情の申出をしたことを理由として、不利益な取扱いを受けない。

(警察本部長による適性評価の実施等)

第十五条 警察本部長は、政令で定めるところにより、次に掲げる者について、適性評価を実施するものとする。

一 当該都道府県警察の職員(警察本部長を除く。次号において同じ。)として特定秘密の取扱いの業務を新たに行うことが見込まれることとなった者(当該警察本部長がその者について直近に実施して次項において準用する第十三条第一項の規定による通知をした日から五年を経過していない適性評価において、特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者であって、引き続き当該おそれがないと認められるものを除く。)

二 当該都道府県警察の職員として、特定秘密の取扱いの業務を現に行い、かつ、当該警察本部長がその者について直近に実施した適性評価に係る次項において準用する第十三条第一項の規定による通知があった日から五年を経過した日以後特定秘密の取扱いの業務を引き続き行うことが見込まれる者

三 当該警察本部長が直近に実施した適性評価において特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者であって、引き続き当該おそれがないと認めることについて疑いを生じさせる事情があるもの

2 前三条(第十二条第一項並びに第十三条第二項及び第三項を除く。)の規定は、前項の規定により警察本部長が実施する適性評価について準用する。この場合において、第十二条第三項第三号中「第一項第三号」とあるのは、「第十五条第一項第三号」と読み替えるものとする。

(適性評価に関する個人情報の利用及び提供の制限)

第十六条 行政機関の長及び警察本部長は、特定秘密の保護以外の目的のために、評価対象者が第十二条第三項(前条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の同意をしなかったこと、評価対象者についての適性評価の結果その他適性評価の実施に当たって取得する個人情報(生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。以下この項において同じ。)を自ら利用し、又は提供してはならない。ただし、適性評価の実施によって、当該個人情報に係る特定の個人が国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第三十八条各号、同法第七十五条第二項に規定する人事院規則の定める事由、同法第七十八条各号、第七十九条各号若しくは第八十二条第一項各号、検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)第二十条各号、外務公務員法(昭和二十七年法律第四十一号)第七条第一項に規定する者、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第三十八条第一項各号、第四十二条各号、第四十三条各号若しくは第四十六条第一項各号、同法第四十八条第一項に規定する場合若しくは同条第二項各号若しくは第三項各号若しくは地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第十六条各号、第二十八条第一項各号若しくは第二項各号若しくは第二十九条第一項各号又はこれらに準ずるものとして政令で定める事由のいずれかに該当する疑いが生じたときは、この限りでない。

2 適合事業者及び適合事業者の指揮命令の下に労働する派遣労働者を雇用する事業主は、特定秘密の保護以外の目的のために、第十三条第二項又は第三項の規定により通知された内容を自ら利用し、又は提供してはならない。

(権限又は事務の委任)

第十七条 行政機関の長は、政令(内閣の所轄の下に置かれる機関及び会計検査院にあっては、当該機関の命令)で定めるところにより、この章に定める権限又は事務を当該行政機関の職員に委任することができる。

第六章 雑則

(特定秘密の指定等の運用基準等)

第十八条 政府は、特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるものとする。

2 【内閣総理大臣は、】前項の基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、我が国の安全保障に関する情報の保護、行政機関等の保有する情報の公開、公文書等の管理等に関し優れた識見を有する者の意見を【聴いた上で、その案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。】

【3 内閣総理大臣は、毎年、第一項の基準に基づく特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の状況を前項に規定する者に報告し、その意見を聴かなければならない。】

【4 内閣総理大臣は、特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の状況に関し、その適正を確保するため、第一項の基準に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督するものとする。この場合において、内閣総理大臣は、特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施が当該基準に従って行われていることを確保するため、必要があると認めるときは、行政機関の長(会計検査院を除く。)に対し、特定秘密である情報を含む資料の提出及び説明を求め、並びに特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施について改善すべき旨の指示をすることができる。】

(国会への報告等)

【第十九条 政府は、毎年、前条第三項の意見を付して、特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の状況について国会に報告するとともに、公表するものとする。】

(関係行政機関の協力)

第二十条 関係行政機関の長は、特定秘密の指定、適性評価の実施その他この法律の規定により講ずることとされる措置に関し、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものの漏えいを防止するため、相互に協力するものとする。

(政令への委任)

第二十一条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

(この法律の解釈適用)

第二十二条 この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。

2 出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。

第七章 罰則

第二十三条 特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。

2 第四条第五項、第九条、第十条又は第十八条第四項後段の規定により提供された特定秘密について、当該提供の目的である業務により当該特定秘密を知得した者がこれを漏らしたときは、五年以下の懲役に処し、又は情状により五年以下の懲役及び五百万円以下の罰金に処する。第十条第一項第一号ロに規定する場合において提示された特定秘密について、当該特定秘密の提示を受けた者がこれを漏らしたときも、同様とする。

3 前二項の罪の未遂は、罰する。

4 過失により第一項の罪を犯した者は、二年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

5 過失により第二項の罪を犯した者は、一年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。

第二十四条 【外国の利益若しくは自己の不正の利益を図り、又は我が国の安全若しくは国民の生命若しくは身体を害すべき用途に供する目的で、】人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。

2 前項の罪の未遂は、罰する。

3 前二項の規定は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用を妨げない。

第二十五条 第二十三条第一項又は前条第一項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、五年以下の懲役に処する。

2 第二十三条第二項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、三年以下の懲役に処する。

第二十六条 第二十三条第三項若しくは第二十四条第二項の罪を犯した者又は前条の罪を犯した者のうち第二十三条第一項若しくは第二項若しくは第二十四条第一項に規定する行為の遂行を共謀したものが自首したときは、その刑を軽減し、又は免除する。

第二十七条 第二十三条の罪は、日本国外において同条の罪を犯した者にも適用する。

2 第二十四条及び第二十五条の罪は、刑法第二条の例に従う。

附則

(施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第十八条第一項及び第二項(変更に係る部分を除く。)並びに附則第九条及び第十条の規定は、公布の日から施行する。

(経過措置)

第二条 この法律の公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日の前日までの間においては、第五条第一項及び第五項(第八条第二項において読み替えて準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定の適用については、第五条第一項中「第十一条の規定により特定秘密の取扱いの業務を行うことができることとされる者のうちから、当該行政機関」とあるのは「当該行政機関」と、同条第五項中「第十一条の規定により特定秘密の取扱いの業務を行うことができることとされる者のうちから、同項の」とあるのは「同項の」とし、第十一条の規定は、適用しない。

(施行後五年を経過した日の翌日以後の行政機関)

第三条 この法律の施行の日(以下「施行日」という。)から起算して五年を経過した日の翌日以後における第二条の規定の適用については、同条中「掲げる機関」とあるのは、「掲げる機関(この法律の施行の日以後同日から起算して五年を経過する日までの間、次条第一項の規定により指定された特定秘密(附則第五条の規定により防衛大臣が特定秘密として指定をした情報とみなされる場合における防衛秘密を含む。以下この条において単に「特定秘密」という。)を保有したことがない機関として政令で定めるもの(その請求に基づき、内閣総理大臣が第十八条第二項に規定する者の意見を聴いて、同日後特定秘密を保有する必要が新たに生じた機関として政令で定めるものを除く。)を除く。)」とする。

(自衛隊法の一部改正)

第四条 自衛隊法の一部を次のように改正する。

目次中「自衛隊の権限等(第八十七条―第九十六条の二)」を「自衛隊の権限(第八十七条―第九十六条)」に、「第百二十六条」を「第百二十五条」に改める。

第七章の章名を次のように改める。

第七章自衛隊の権限

第九十六条の二を削る。

第百二十二条を削る。

第百二十三条第一項中「一に」を「いずれかに」に、「禁こ」を「禁錮」に改め、同項第五号中「めいていして」を「酩酊して」に改め、同条第二項中「ほう助」を「幇助」に、「せん動した」を「煽動した」に改め、同条を第百二十二条とする。

第百二十四条を第百二十三条とし、第百二十五条を第百二十四条とし、第百二十六条を第百二十五条とする。

別表第四を削る。

(自衛隊法の一部改正に伴う経過措置)

第五条 次条後段に規定する場合を除き、施行日の前日において前条の規定による改正前の自衛隊法(以下この条及び次条において「旧自衛隊法」という。)第九十六条の二第一項の規定により防衛大臣が防衛秘密として指定していた事項は、施行日において第三条第一項の規定により防衛大臣が特定秘密として指定をした情報と、施行日前に防衛大臣が当該防衛秘密として指定していた事項について旧自衛隊法第九十六条の二第二項第一号の規定により付した標記又は同項第二号の規定によりした通知は、施行日において防衛大臣が当該特定秘密について第三条第二項第一号の規定によりした表示又は同項第二号の規定によりした通知とみなす。この場合において、第四条第一項中「指定をするときは、当該指定の日」とあるのは、「この法律の施行の日以後遅滞なく、同日」とする。

第六条 施行日前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。旧自衛隊法第百二十二条第一項に規定する防衛秘密を取り扱うことを業務とする者であって施行日前に防衛秘密を取り扱うことを業務としなくなったものが、その業務により知得した当該防衛秘密に関し、施行日以後にした行為についても、同様とする。

(内閣法の一部改正)

第七条 内閣法(昭和二十二年法律第五号)の一部を次のように改正する。

第十七条第二項第一号中「及び内閣広報官」を「並びに内閣広報官及び内閣情報官」に改める。

第二十条第二項中「助け、」の下に「第十二条第二項第二号から第五号までに掲げる事務のうち特定秘密(特定秘密の保護に関する法律(平成二十五年法律第 号)第三条第一項に規定する特定秘密をいう。)の保護に関するもの(内閣広報官の所掌に属するものを除く。)及び」を加える。

(政令への委任)

第八条 附則第二条、第三条、第五条及び第六条に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

(指定及び解除の適正の確保)

【第九条 政府は、行政機関の長による特定秘密の指定及びその解除に関する基準等が真に安全保障に資するものであるかどうかを独立した公正な立場において検証し、及び監察することのできる新たな機関の設置その他の特定秘密の指定及びその解除の適正を確保するために必要な方策について検討し、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。】

(国会に対する特定秘密の提供及び国会におけるその保護措置の在り方)

【第十条 国会に対する特定秘密の提供については、政府は、国会が国権の最高機関であり各議院がその会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定める権能を有することを定める日本国憲法及びこれに基づく国会法等の精神にのっとり、この法律を運用するものとし、特定秘密の提供を受ける国会におけるその保護に関する方策については、国会において、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。】

別表(第三条、第五条―第九条関係)

一 防衛に関する事項

イ 自衛隊の運用又はこれに関する見積り若しくは計画若しくは研究

ロ 防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報

ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力

ニ 防衛力の整備に関する見積り若しくは計画又は研究

ホ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物の種類又は数量

ヘ 防衛の用に供する通信網の構成又は通信の方法

ト 防衛の用に供する暗号

チ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの仕様、性能又は使用方法

リ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの製作、検査、修理又は試験の方法

ヌ 防衛の用に供する施設の設計、性能又は内部の用途(ヘに掲げるものを除く。)

二 外交に関する事項

イ 外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容のうち、国民の生命及び身体の保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの

ロ 安全保障のために我が国が実施する貨物の輸出若しくは輸入の禁止その他の措置又はその方針(第一号イ若しくはニ、第三号イ又は第四号イに掲げるものを除く。)

ハ 安全保障に関し収集した【国民の生命及び身体の保護、領域の保全若しくは国際社会の平和と安全に関する重要な情報】又は条約その他の国際約束に基づき保護することが必要な情報(第一号ロ、第三号ロ又は第四号ロに掲げるものを除く。)

ニ ハに掲げる情報の収集整理又はその能力

ホ 外務省本省と在外公館との間の通信その他の外交の用に供する暗号

三 特定有害活動の防止に関する事項

イ 特定有害活動による被害の発生若しくは拡大の防止(以下この号において「特定有害活動の防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究

ロ 特定有害活動の防止に関し収集した【国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報】又は外国の政府若しくは国際機関からの情報

ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力

ニ 特定有害活動の防止の用に供する暗号

四 テロリズムの防止に関する事項

イ テロリズムによる被害の発生若しくは拡大の防止(以下この号において「テロリズムの防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究

ロ テロリズムの防止に関し収集した【国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報】又は外国の政府若しくは国際機関からの情報

ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力

ニ テロリズムの防止の用に供する暗号

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