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2009年10月 4日 (日)

海と毒薬

 本日はちょっと古い映画の感想を。もっとも,1986年公開の映画というのは,僕としてはけっこう新しい映画の部類なんですが(笑)・・・CSで見た「海と毒薬」(監督:熊井啓,出演:奥田瑛二,渡辺謙,岡田真澄,田村高廣 ほか)という映画です。【以下,ネタバレあり】

 太平洋戦争末期に某大学病院で実際にあったとされている,B29戦闘機で日本の本土を爆撃した米軍捕虜への生体解剖事件を描いた,遠藤周作氏の同名小説を映画化したものです。この映画は熊井啓監督によって1969年に脚本化されていたものの,その内容のためにスポンサーがなかなか付かず,実際に映画化されたのは17年後の1986年とのことです。ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞とか。

 米軍捕虜を殺害したことによって,終戦後に関係者が占領軍によって逮捕・尋問されるシーンは,あの「私は貝になりたい(1959年および2008年に映画化)」や,2007年公開の「明日への遺言(監督:小泉堯史,出演:藤田まこと ほか)を思い出します。また,患者をダシに使って学長の椅子を争うシーンは,1966年公開の映画「白い巨塔(監督:山本薩夫,出演:田宮二郎,東野英治郎 ほか)を彷彿させます。

 その意味で,映画の全体的イメージとしては,「私は貝になりたい」と「明日への遺言」と「白い巨塔」を足して3で割ったような映画と言えるでしょうか。それに,「白い巨塔」で正義感の強い里見助教授役を演じていた田村高廣さんが,この映画では,「患者によって態度が豹変する教授」という悪役ぶりを見事に演じていました。

 このように,この「海と毒薬」は,他のいくつかの映画のイメージとダブる映画ですが,原作は遠藤周作氏が1958年に発表した小説。「私は貝になりたい」が1958年にTVドラマ化され,「明日への遺言」の原作(大岡昇平氏作「ながい旅」)は1982年発表で,「白い巨塔」の原作は山崎豊子氏が1963年から1965年にかけて連載小説として発表した小説ということを考えると,1958年に発表された「海と毒薬」のオリジナル性は,かなり高いと言えるでしょうね。

 映画の前半は展開がちょっと散漫な気がしましたが,いよいよ生体解剖に突入する後半からは,俄然面白くなります。そもそも大学病院で,なんで死体解剖でなく生体解剖が必要なんでしょうか?・・・たとえば,生きている人の臓器をどこまで摘出してもだいじょうぶ(生命に危険がない)で,どこからはダメなのか。それを実際に確かめることができるという,医学の発展にとって非常に価値ある解剖実験である・・・みたいな大義名分が述べられていたりします。う~~ん,恐ろしい。

 殺させることを知らない米軍捕虜が,解剖する医師との問診で談笑するシーンはめっちゃ怖いし,解剖シーンを興味津々で見学に来る軍人を見ると,人間誰もが持つ「残酷さ」を痛感させられて自己嫌悪に陥ります。生きている人間を解剖しながら殺してしまうシーンには身の毛がよだつし,戦争で人を殺すシーンや死刑執行シーンやなんかよりも遙かに衝撃的です。ということで,マンネリ化したホラー映画なんかよりも,はるかに怖いショッキングな映画だと,僕は感じました。

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