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2009年8月11日 (火)

初の裁判員裁判

 市民が刑事裁判に参加する初めての裁判員裁判が東京地裁で行われ,大々的に報道されていましたが,この制度に賛成の僕にとっても,けっこう違和感を覚える裁判だったと言えます。

 まずは過剰な報道。「裁判員が初めて質問した!」みたいな,裁判員の一挙手一投足が細かく報道されるのって,すごく違和感ありました。最初に裁判員になった人は,メディアの注目を浴びすぎて必要以上に緊張したんじゃないでしょうか。ちょっと気の毒です。

 この裁判では,裁判員を選任するために,東京地裁は73人の裁判員候補者に呼び出し状を発送。うち6人には呼び出し状が届かず,仕事や家庭の事情で事前に辞退を認められたのが18人だったため,選任手続きには49人に出席を求め,うち2人は出席せず,実際に出席したのは47人。その中の2人が当日辞退を希望して認められ,残った45人でくじ引きを行い,6人の裁判員と補充裁判員3人の計9人が選ばれたとか。

 たった9人を選ぶのに73人に召集令状,じゃない,呼び出し状を送るなんて,やはり多すぎ。呼び出し状が来ても選任されるのはたった8分の1と確率は低く,たとえ選任されても9人中3人は補欠という「狭き門」なんですね。「裁判員に選ばれたい!」と思っている僕としては,選ばれたい反面,こんな確率の低い選任方法に当選することに「運」を使いたくないし,そんな「運」は宝くじ当選に残しておきたい気がします。

 いずれにしても,やりたい人がなかなかやれなくて,やりたくない人がイヤイヤやるという選任方法は,やはりどう考えても無理があるんではないでしょうか。この選任方法が続く限り,この制度は長続きしないんじゃないかと予感します。

 そして裁判の内容は,物的証拠や証拠書類を確認しながら進行するという従来の裁判スタイルとは大きく変わり,映像などを使っていかに裁判員にわかりやすく説明するかというのがポイント。まるでプレゼンかショーかとも言われています。そして,裁判が始まってから結審するまでがわずか3日。これも裁判員への便宜を図ったということなんでしょう。これらの「裁判員が主役の裁判」というのは,本来あるべき裁判の姿とは違うんではないでしょうか。

 裁判員裁判は,殺人事件などの重大事件が対象とされているので,今後は「重大事件ほど短期間で結審する」というヘンなことになりそうです。裁判の形態がこのように変わると,捜査権という絶大な権力と組織力を持つ検察と違って,弁護側はますます対応が苦しくなって不利になるでしょう。弁護側にはちょっとお気の毒です。

 そして何よりも僕が違和感を持ったのが,検察の求刑「懲役16年」に対して「懲役15年」という今回の判決。多くの専門家が「重めの量刑だった」と述べているように,通常検察は当然サバを読んで「重め」の求刑にしているわけで,従来の裁判だったら,求刑が「15年」なら判決はたとえば「12年」みたいになっていたでしょう。これには,検察がサバを読んでいるという以外に,原告・被告双方とも控訴しにくいような絶妙な量刑にするというのも裁判所の重要な役割だからと僕は認識しています。もちろん,被告が無実を争っているような場合は別ですが。

 判決が「重め」だったせいか,結局被告は控訴するらしい。控訴審はもちろん裁判員対象外の裁判なので,これだけ騒いで実施された裁判員裁判も,結局は控訴ということで「ご破算」になったみたいなものですよね。お疲れさまでした。控訴審で結局「懲役12年」ぐらいで確定して,あの裁判員裁判はいったい何だったのか?・・・なんていうオチが予想されます。

 ということで,裁判員裁判を意味あるものにするためには,「原告・被告双方が控訴しないギリギリの量刑」を下すということも重要。裁判員裁判には,そういった裁判員のセンスも試されているのではないかと感じた裁判でした。

 過去の関連記事:裁判員制度スタート(2009年5月23日)

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