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2009年7月12日 (日)

ぜんぶ,フィデルのせい

 絶対に全部は見きれないぐらいのたくさんの映画が,タダ同然で毎日CSなどで放送されていますが,そんな中で,なんとなくストーリーが面白そうなので見たところ,これが予想以上に傑作で,「拾い物」をしたという映画がありました。

「ぜんぶ,フィデルのせい」(2006年,イタリア/フランス)
 監督:ジュリー・ガヴラス
 出演:ニナ・ケルヴェル,ジュリー・ドパルデュー,ステファノ・アコルシ ほか

 舞台は1970年代のパリで,ミッションスクールに通う9歳の少女アンナは,スペインの貴族出身で弁護士の父と雑誌記者の母と弟の4人家族で,何の不自由もない贅沢な毎日を送っていたものの,ある日,長年スペインで反政府運動に携わっていた伯父が亡くなり,残された叔母と従姉妹がアンナの家で同居することになり,これを境に,両親は次第に共産主義的な価値観に目覚め,日常生活が激変していくというストーリー。

 アパート生活を強いられて見知らぬ人が出入りするようになったり,アンナの両親が学校へ申し出て宗教の授業への出席ができなくなったり,「ミッキーはファシスト」と教え込まれたりなど,親の価値観を押しつけられるアンナがとてもかわいそうで理不尽に思えます。この映画では,これらをすべてアンナの視点で捉え,アンナの目で見た「奇妙な大人の行動」として,ユーモアと皮肉たっぷりに描写されています。この視点は出色で,一つ一つのシーンがおかしく,決してコメディー映画でもないのに笑えるシーンが満載です。

 この映画は,共産主義的な考えを持つ人に対して皮肉たっぷりに描写されていますが,かといって当時のそういった思想を否定したり批判したりしたものでもないと思います。子どもの純粋な目線で見た,興味と驚きと戸惑いの感覚が,コミカルに描かれた作品と言えるでしょう。

 この映画のタイトルの「フィデル」は,キューバの革命家「フィデル・カストロ議長」を指しています。アンナの生活がこうなってしまったのはすべて「フィデル・カストロ」が原因らしいと,アンナの憤懣やるかたない気持ちが,「ぜんぶ,フィデルのせい」というタイトルに表われているようです。なかなかナイスなタイトルです。ちなみに原題は「LA FAUTE A FIDEL!」。

 アンナ役を演じているニナ・ケルヴェルさんはとてもかわいい少女ですが,いつも生意気でふてくされたような表情。常に しかめっ面で何かに不満を持ったような顔をしていて,アンナの心情がとても上手く表情に出ています。これが「地」なのか演技なのかわかりませんが,もし演技だったらほんと凄い少女です。

 この映画では,パリのはるか彼方のチリで,アジェンデ政権が誕生するシーンが背景になっています。1970年のチリ大統領選挙で誕生したアジェンデ政権は,世界初の民主的選挙による社会主義政権と言われていますが,1973年にアメリカが後押しした軍事クーデターによって倒閣され,その後軍事独裁国家に移行しています。アジェンデ政権の軍事クーデターによる崩壊というのは,当時の僕にとってはショッキングなニュースだったので懐かしいです。この軍事クーデターをドキュメンタリー・タッチで描いた「サンチャゴに雨が降る」という映画を見た記憶もあります。

 そういえば日本でも,55年体制当時には,「革新政権(今や死語?)がもし誕生したら自衛隊がクーデターを起こす計画あり」みたいな自衛隊の内部文書が暴露されて話題になったことがありました。これまたショッキングなニュースでしたが,当時は「やっぱりねー」という感想を持った記憶があります。どんな国家体制であっても,独裁国家の体制を守るのは軍隊であり,民主的な体制を倒すのもまた軍隊 というのがこれまでの世界の歴史。ベルリンの壁や旧ソ連を崩壊させて民主国家への道を開いたのは決して軍隊ではありません。

 「革新政権が誕生したら自衛隊がクーデター」なんて話があったことは,今の若い人はご存じないと思いますが,ちなみに,仮に今度の総選挙で民主党政権が誕生したとしても,いろんな意味で55年体制当時の「革新政権」とはまったくの別物。間違っても自衛隊がクーデターを起こすことはないので,その点は安心していいでしょう。

 話が大きく脱線してしまいましたが,この「ぜんぶ,フィデルのせい」という映画は,ユーモアたっぷりでとてもセンスいい映画だと感じました。ラストシーンもなかなか良かったですよ。ということで,この手の映画に興味ある方は,ぜひご覧下さい。CSの「ムービープラス」で,7月中に何度か放送される予定です。

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