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2009年5月14日 (木)

文学作品

 文学作品のうち,純文学と大衆文学の違いって,いったい何なんでしょう。「芸術性に重きを置いたものが純文学で,商業性に重きを置いたものが大衆文学」のように言われていますが,純文学だからといって売れないわけではないし,大衆文学だからといっても,小説である限り当然芸術性はあるわけで,考えれば考えるほどわかりません。小説のジャンルを純文学と大衆文学に分けるのって,相当無理があると思えます。

 文藝春秋社が年2回発表する芥川賞と直木賞の場合,純文学を対象としたのが芥川賞で,大衆文学を対象としたのが直木賞ということになっていますが,現実には,小説の形態よりも,新人向けの賞が芥川賞でベテラン向けの賞が直木賞みたいになっているらしいですね。ちなみに僕の場合,芥川龍之介の小説というのは何作も読んでいるし,小説のタイトルはいくつも思い浮かびますが,直木三十五の小説といってもタイトルが全然思い浮かびません。それぐらい,芥川龍之介の方が有名で大衆的であり,「永遠のベストセラー」になっていると言えるのではないでしょうか。皮肉なものです。

 ということで,ある小説を純文学か大衆小説かに色分けするのはまったく無意味だと思いますが,いずれにしても,過去の「名著」と言われる長編小説というのは,毎日が忙しい今となっては,なかなか気軽に読むことができず,読み進むのはけっこう苦痛で,睡魔との戦いになったりします。こんな時に便利なのが映画ですね。もちろん,小説と映画というのはまったく異なる表現形態であり別物ですが,過去の有名な文学作品の多くは映画化されており,たった2時間で小説のダイジェストをつかむことのできる映画というのは,手っ取り早くて便利なものです。

 そこで,前々から読みたいと思っていて読めなかった文学作品の映画版を一気に3作品見ました。いずれもDVD化されていて,TSUTAYAの宅配レンタルを利用すればいつでも気軽に見ることができますよ。

1.破戒(1962年公開)
  原作:島崎藤村
  監督:市川崑
  出演:市川雷蔵,長門裕之,船越英二,藤村志保,三国連太郎 ほか

 島崎藤村が1905年(明治38年)に発表した長編小説。「破壊」ではなく「破戒」で,「戒めを破る」ということです。どんな「戒め」かというと,主人公である小学校教師が被差別部落の出身であることを絶対に公言してはならないという,父親からの「戒め」です。
 当時の部落差別がいかにひどい物であったかや,自分の出身の秘密を隠すというのがいかに苦しいことであったかが,上手く表現されています。学校長役を演じていた脇役の宮口精二さんが,憎々しくっていい味を出していたのが印象的でした。
 それにしても,明治の時代にこんな小説を発表した島崎藤村って凄いなあと思います。当時としては,新しい時代に向けて世の中が変わっていくことを予感させた衝撃的な作品だったんでしょうね。

2.野火(1959年公開)
  原作:大岡昇平
  監督:市川崑
  出演:船越英二,ミッキー・カーティス,滝沢修,浜口喜博 ほか

 実体験に基づく戦争文学でおなじみの大岡昇平が原作。もっとも,氏の他の作品とは異なり,本作のストーリーは多くの部分がフィクションと言われています。
 舞台は太平洋戦争末期のフィリピンのレイテ島。戦地といっても,まともな攻撃ができるわけではなく,米軍の襲撃からひたすら逃げることと,そして毎日が食料あさり。とても軍隊の体をなしていない集団といえます。月並みな感想ですが,こういう映画を見ると,戦争なんてするもんじゃないと,つくづく思いますね。
 戦地では食料探しに明け暮れ,飢餓という極限状態での人間の行動がいかに常軌を逸しているかというのがこの小説のテーマ。そして,何よりもショッキングなのが,兵士が人肉を食べるという恐ろしいシーン。う~~ん,このテーマ,重すぎます。

3.真空地帯(1952年公開)
  原作:野間宏
  監督:山本薩夫
  出演:木村功,利根はる恵,神田隆,加藤嘉 ほか

 戦争の悲惨さの表現方法は色々あると思いますが,この作品には戦闘シーンは一切無く,旧陸軍内務班の非人間性をひたすら表現することによって戦争の悲惨さを表現した作品。原作は,戦時中に思想犯として服役し,戦後日本共産党に入党した野間宏。それだけに,軍隊生活の不条理さを表現するのは「お手の物」ってところでしょうか。
 映画では,刑務所生活と軍隊生活が対比的に描かれていますが,「どっちもどっち」と思わせるぐらい,軍隊というのはホントむちゃくちゃな所だったと痛感します。

 ということで,映画を通して過去の文学作品に触れるという「手抜き」をしたわけですが,結局は,どの作品もやっぱり原作を読みたくなってしまいました。いずれ時間があれば読んでみようと思います。

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