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2008年10月 7日 (火)

未来技術遺産

 国立科学博物館は,科学技術の発達史で重要な成果を示した重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)の登録制度を始め,第1回として23件を登録したとか。この未来技術遺産は,「科学技術発展の重要な側面や段階を示すもの」「新たな分野の創造に寄与したもの」「失敗事例など技術継承上で教育的な価値があるもの」「新たな生活様式の創出や経済の発展に貢献があったもの」などが選ばれるそうです↓
http://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/17924.pdf

 選定根拠がイマイチ不明確で,決め方がなんとなくお役所的でぱっとしない企画のように思えましたが,それでも,こういう古い機械や道具を見るのは大好きだし,何よりも,これを発明した人にはほんと頭が下がる思いです。

 この中で,僕にとって特に印象に残ったのは以下のものです。(説明文と写真はいずれも国立科学博物館ホームページから転載)

1.真空管式電子計算機(製作年:1950年代)

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選定理由:わが国で最初期に開発された電子計算機である。大阪大学では終戦直後から電子計算機の研究を開始し,1950年に世界初の電子計算機と言われるENIAC型の演算装置を試作した。その延長線上で,真空管式のコンピュータの開発に着手し,本機は1959年に基本動作を確認した。本機は,日本のコンピュータ開発の先鞭をつけただけでなく,その後の研究開発に貢献した日本コンピュータ史上さきがけとなった装置である。

 「真空管(死語?)で作った電子計算機」というのは,原理的には可能という話は聞いたことがありましたが,現実には大量の真空管で構成すると「球切れ」の確率が高くて実用にならないと思っていました。でも,実際に開発された実物があったんですね。驚きました。

2.噴水型飲料用自動販売機(製作年:1962年)

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選定理由:販売商品を美味しく見せる画期的なディスプレイ方法により,一躍自販機を普及させるきっかけを作った製品である。冷凍装置が初めて自販機技術として持ち込まれ,以後飲料機の欠かせない技術になった。紙カップ式飲料を消費者に馴染ませた。これが「飲料のその場消費」を導き,飲料自販機産業化に大きな貢献をすると同時に,一般大衆の飲食文化に多大な影響を与えた。

 技術的にどうのというよりも,ジュースの自販機の噴水ディスプレイが超懐かしいです。僕が子供の頃,近くの商店街にこれが置かれていて,値段は紙コップ1杯10円でした。でも,10円というのは当時の子供にとっては大金。一度飲んでみたくてたまらなくなって,ある日「半分でいい!」と思って5円硬貨を投入しところ,当然商品は出てこず,お金も返ってこなくて,悲しい思いをした記憶があります。

3.世界初のオールトランジスタ電卓(製作年:1964年)

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選定理由:世界初のオール・トランジスタ,オール・ダイオード採用の電子式卓上計算機である。535,000 円と,当時の代表的な乗用車とほぼ同じ価格にも拘わらず,従来の機械式に比して,計算が速く音が静かであることが評価を得て,国内外で予想を上回る売れ行きを見せた。論理演算子として最初からトランジスタを使ったことがIC化,LSI化に結びつき,その後の電卓の小型軽量化,大衆化を推進させる源流となった,電卓史上記念すべき製品である。

4.電子式卓上計算機 カシオミニ(製作年:1972年)

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選定理由:電卓を一般公衆に普及させる契機となった記念碑的製品である。「答え一発,カシオミニ」のキャッチフレーズで爆発的な人気を呼び,電卓をオフィスユースから一般家庭・個人にまで浸透させ,幾多のパーソナル情報機器開発の礎を作った。読み,書き,ソロバンと言われた日本人古来の技能のひとつであるソロバンに代替する手段を提供し,日本人の生活に大きな影響を与えた。

 理系大学に通っていた僕にとって,関数電卓は必需品でしたが,ちょうど電卓が普及していた時期で,ほんと助かりました。複雑な関数計算を先人はどうやっていたのかと不思議に思ったものです(計算尺とか?)。それにしても,シャープ製の世界初の電卓が1960年代,しかも50万円を超える価格とは,驚きです。

5.VHS方式家庭用ビデオ(製作年:1976年)

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選定理由:本機はVHS方式家庭用ビデオの第一号機であり,急速に普及した家庭用ビデオの原点とも言える製品である。VHS 方式は,その後世界の標準規格となり,2006年には全世界の生産累計が9億台を超えたといわれる。本機は,長時間録画・高画質・小型・軽量という設計であり,後の家庭用ビデオのプロトタイプとなった。急速な家庭用ビデオの普及は,全世界に新たな生活文化を創出したと言え,国際的に見て一時代を画す顕著な貢献をした。

 知る人ぞ知る,日本人が発明した世界標準規格VHS方式ビデオですね。僕が初めてホームビデオを買ったのは1980年代以降ですが,当時は30万円ぐらいだった記憶があります。今だったら,こんなお金は絶対出せません。

 なお,今回登録された23件の未来技術遺産は,以下のとおり。
(1)特別高圧油入変圧器(現存最古の変圧器)
(2)巡洋戦艦「金剛」搭載ヤーロー式ボイラー(現存最古級の艦艇用ボイラー)
(3)TYK無線電話機(世界初の無線電話)
(4)手吹き式ガラス円筒(日本最古級の板ガラス用ガラス円筒)
(5)高柳式テレビジョン「イ」の字書き雲母板(世界初のブラウン管式テレビの被写体)
(6)分割陽極マグネトロン(マイクロ波技術への世界的貢献)
(7)依佐美送信所送信装置一式(ヨーロッパとの電波のかけ橋)
(8)第1号ナイロン紡糸機(日本初のナイロン製造装置)
(9)国産初期の硬質塩化ビニール管サンプル
(10)国産大型舶用ディーゼル実験機関(日本初の排気過給機付きディーゼル機関)
(11)溶炉図面42枚(銅精錬技術革新を示す)
(12)空気湿電池300型
(13)旧千葉火力発電所1号機タービン発電機(戦後初の火力発電用タービン)
(14)大阪大学真空管式計算機一式(日本最初期の真空管式電子計算機)
(15)パイロット計算機KT-PILOT(世界に先駆けたマイクロプログラム方式コンピューター)
(16)噴水型飲料用自動販売機(自販機普及のさきがけ)
(17)電子式卓上計算機コンペットCS-10A(世界初のオールトランジスタ電卓)
(18)喜撰山発電所フランシス形ポンプ水車(世界最大容量だった揚水発電用水車)
(19)電子式卓上計算機カシオミニ(電卓普及の契機になった)
(20)VHS方式家庭用ビデオHR-3300(世界標準となったVTR)
(21)SCARA試作機(世界で定番となった産業用ロボット)
(22)縮小投影型露光装置NSR-1505G2A(世界を席巻した集積回路の製造装置)
(23)H2ロケット7号機(初の純国産ロケット)

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コメント

>5円硬貨を投入しところ,当然商品は出てこず,お金も返ってこなくて
かばさん、悲しい想い出なのに、こんな言い方をしたら失礼ですが、かわいらしい☆私がお店のおばちゃんやったら「次からちゃんと10円いれよしや」って、オマケでジュースをあげると思います(笑)

我が家に初めてやってきたVHSは、上から差し込むタイプのものではなかったのですが、昔のはすごいですね。どこかのレコーディングルームのやつみたいです。それにしても、VHSを日本人が開発した、というのは誇らしいです。「プロジェクトX」で、VHS対ベータの開発競争のドラマが取り上げられていたのを思い出しました。

以前、関数電卓をかちゃかちゃ扱っている人たちがいる職場でアルバイトをしていたのですが、すごくかっこよかったです!理系さんはやっぱり永遠の憧れです!

投稿: kate* | 2008年10月 8日 (水) 01時02分

 当時,粉末ジュースしか飲んだことのない子供にとっては,噴水ジュースを飲むのは夢でした。
 缶ジュースも滅多に飲む機会がなかったです。当時のジュース缶は,小さい缶切りのようなもので自分で2箇所に穴を開ける方式で,1箇所が飲み口で1箇所が空気穴。空気穴を開けずに飲み口だけしか開けないとスムーズに飲めないため,貴重なジュースがすっごく長持ちします。そんなことをやってた超セコい子供でした。

投稿: かば | 2008年10月 8日 (水) 21時43分

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