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2008年10月30日 (木)

実名報道判決

 女子中学生にみだらな行為をしたとして逮捕された沖縄県内の中学教諭が,「実名報道で名誉を傷つけられた」などとして,県内の民放3社とNHKに損害賠償を求めていた訴訟の控訴審判決があり,福岡高裁那覇支部は「逮捕容疑の内容は公共の重大な関心事であり,実名報道の必要性は高い」として,請求を棄却した一審判決を支持しました。

 このブログで何度も書いているように,容疑者が有罪か無実かは最終的に司法が判断すべきもので,逮捕された時点ですぐにマスコミが容疑者の実名を公表していいというものではないと思っています。被害者名はもちろん,容疑者名も匿名報道にすべきというのが僕の考えです。さらに言えば,冤罪の可能性がある限り,たとえ刑が確定しても被告は匿名でいいと思っています。

 容疑者が実名で報道されることによる犯罪抑止効果はたしかにあると思いますが,犯罪抑止はマスコミの役割でもなんでもないし,マスコミには当事者の了解なく被害者や容疑者の実名を公表する権限はないと思っています。しかも,新聞やテレビニュースが報道の主流だった昔と違って,今は文書のデジタル化とネットの普及が進み,いったん公表されてしまった事実は絶対に消すことができません。マスコミは,いつまでも前近代的な習慣を引きずるのはやめて欲しいものです。

 そもそも,一般の新聞読者やテレビ視聴者は,容疑者の顔や実名に興味なんかあるんでしょうか。僕は全然知りたいと思わないし,容疑者が佐藤でも鈴木でも高橋でも自分には関係ないので,容疑者の実名を報道することの意義がまったく理解できません。この判決では「逮捕容疑の内容は公共の重大な関心事」と述べられており,そのとおりかも知れませんが,だからといってなんで「実名報道の必要性は高い」となるのかがまったく理解できません。

 自分がもし誤認逮捕されて容疑者扱いされ,実名でデカデカと報道されたり,自分の身内の人間が容疑者として実名報道されたりしたことを想像すると,本当に恐ろしい。マスコミ関係者やこの裁判官は,自分自身がこういう立場になる可能性を想像できないんでしょうか。

 と,ここまで書いて,最近テレビで見た映画「手紙」(2006年公開,監督:生野慈朗,出演:山田孝之,玉山鉄二,沢尻エリカ 他)を思い出しました。この映画は,強盗殺人を犯した兄を持つ青年が,社会から冷たい仕打ちを受けながら,受刑中の兄と手紙をやりとりするという,東野圭吾氏原作のドラマです。犯罪加害者の家族である主人公は,実名報道の被害者と言えるかも知れません。

 刑務所で検閲を受けた手紙に「桜の花びら」のスタンプが押されるというのは,この映画で初めて知りました。また,主人公の働く職場が実在の「ケーズデンキ」だったのがなかなかリアルで,会長役の杉浦直樹さんがいいキャラを出していたと感じました。

 残念だったのは沢尻エリカさんで,メガネが似合ってないのはご愛敬としても,ヘンなイントネーションの関西弁は許せません。映画の舞台が関東であり,東京出身の沢尻エリカさんに無理やり関西弁をしゃべらせる必然性はなく,これは失敗だったと思います。ということで,犯罪加害者の家族にスポットを当てるという,非常にマジメで好感のもてるテーマでしたが,映画の完成度はイマイチと感じました。

 映画の話題に脱線してしまいましたが,いずれにしても,何でもかんでも実名報道しないと気がすまないマスコミにはウンザリです。たとえば新聞の投書欄なんかも実名公表でないと原則として受け付けてくれないみたいです(朝日の場合)。新聞の投書欄は,今やネットで簡単に投稿できるようになったため,世の中への突っ込みネタがいっぱいある僕としては,一度は新聞に投稿してみたいものですが,忙しくてそんな時間がないのと,やはり実名公表がネックで投稿する気にはなりませんね。

過去の関連記事:
  実名報道の疑問(2005年11月27日)
  新聞の投書欄(2006年1月4日)
  名前(2006年9月15日)
  実名か匿名か(2007年8月27日)

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2008年10月29日 (水)

ロードショー2本

 今週の日曜日はロードショーを2本見てきました。学生時代には「3本立ての名画座のハシゴ」をやったりしたものですが,映画館のハシゴなんて学生時代以来何十年かぶりです。

 まずは25日から公開されている「センター・オブ・ジ・アース(3D版)」。この映画は,上映される映画館によって3D版と通常版があり,僕が見たのは3D版。というか,3D版だからこそ見たわけで,通常版だったら僕はまず見ない映画です。

 3D映画といえば,テーマパークや博覧会などのアトラクションでおなじみですが,一般公開の3D映画というのは作品の質がイマイチだったため,あまり定着しなかったと言われています。今回の「センター・オブ・ジ・アース」は,3D映画としては国内では過去にない大規模公開で,新たに3D映写設備を整えた映画館も多かったとか。なお,映像に集中できるようにということで,3D版はすべて日本語吹き替え版となっています。

 原作はジュール・ヴェルヌの「地底探検」で,地球の内側に別の世界があるというお話。この原作に限らず,ジュール・ヴェルヌの小説は夢があって僕は大好きです。ただ,映画の舞台は現代に置き換えられてヴェルヌはあくまで小説家として扱われ,「このヴェルヌの小説は実話だった」という少しひねった設定になっています。

 立体メガネをかけると画面が暗くなるため映像は多少見にくくなりますが,さすがに立体効果は抜群で,不覚にも,3D映画だとわかっていながら思わずのけぞってしまったことがありました。テーマパークのアトラクションなどの立体映画の上映時間はせいぜい10分程度ですが,この映画の上映時間は約90分。視覚的に疲れるということはありませんでしたが,もともと僕はメガネが苦手で,長時間立体メガネをかけていると耳の付け根が痛くなりました。なお,普通のメガネをかけている人は,メガネの上から立体メガネを重ねてかけることができるそうです。

 もう1本の映画は,同じく10月25日から公開されている「ホームレス中学生」(監督:古厩智之,出演:小池徹平 ほか)。突然自宅を差し押さえられて父親が失踪してしまったためにホームレス生活を余儀なくされた中学生の奮闘と,その兄姉との家族愛を描いたドラマで,お笑い芸人の田村裕さんの自叙伝が原作とか。

 実年齢22歳の小池徹平さんが中学生役というのはいくらなんでも無理があるような気がしましたが,兄弟3人がそれぞれいい味を出していたと思います。そして,ホームレス生活を経験することによって,食べ物があり,トイレがあり,お風呂に入れるという「当たり前の生活」や家族の愛情がいかにありがたいものかということを認識させてくれる映画です。ちょっと ありきたりですが。

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2008年10月26日 (日)

株価の乱高下

 国内外で株価が乱高下していることが連日報じられていますが,これが一般人の生活にどう影響してくるのかは,はっきり言って経済オンチの僕にはよくわかりません。今でこそ当たり前のように日々の株価がニュース等で報じられていますが,その昔は,日々の株価なんて,普通のテレビのニュースではほとんど報道されていませんでした。

 僕の記憶では,ニュースで株価の動きが報じられるようになったのは,1980年代後半のバブルの頃以降。マネーゲームが一種のブームとなり,マスコミによって「一般人も株価に興味を持つのが普通ですよ」というのを植え付けられたのではないかと思っています。当時僕は,株価の変動なんてメディアが騒いでいるだけであり,投資ビジネスに関係する専門家や投資家が心配すればいいだけで,一般人にはどうでもいいじゃん! と思っていました。

 最近の株価の急激な下落により,ネット証券会社のサービスセンターには個人投資家から株価の動きに関する問い合せが増えているとか。これも笑える現象で,いったい証券会社に聞いて何がわかるねん? って思います。株式売買を自分の判断でできなくてどうするんでしょうか。

 それにしても,一素人としては,株価がなんでこれだけ急激に変動するのかは不思議で,なかなか理解できない世界です。そもそも株価というのは,「今後株価が上がると予想するのでこの価格で買いたい」と考える人と,「今後株価が下がると予想するのでこの価格で売りたい」と考える人の価格が一致した時に売買が成立するというもの。つまり,株価というのは,企業の業績とか景気の状況などを反映して決まると言うよりも,売買する人の思惑だけで決まると言ってもいいでしょう。

 いくら株価が上がっても下がっても,当然のことながら売買が成立した価格なわけで,たとえ「こんな価格で?」と思えるような価格でも,同じ株数の買う人と売る人が,まったく正反対の思惑で行動しているということ。ところが,ニュースの株式市況コメントなどを見ると,株価は人それぞれの思惑の結果であるにもかかわらず,投資家全員が同じ考えで行動しているかのようなもっともらしいコメントになっていて笑えます。

 たとえば,先週の10月21日から24日までのWebニュース上の株価に関するコメントは以下のとおりです。(asahi.comより抜粋)

10月21日(日経平均終値の前日比:300円66銭↑)
 前日の米国市場で株価が急反発した流れを受け継ぎ,金融不安がいったん遠のいたとの見方が強まり,米国の景気対策を追加する期待感から幅広い銘柄が買われ,3営業日連続での上昇となった。

10月22日(日経平均終値の前日比:631円56銭↓)
 前日の米国市場で株価が下落した流れを受け,米国をはじめとする世界経済の先行き不安に加え,日経平均が前日まで3営業日続けて値上がりしたため,当面の利益を確定する売り注文も集まった。

10月23日(日経平均終値の前日比:213円71銭↓)
 前日の米国株価の大幅下落を受けて株価が急落。米国に続く欧州の景気減速懸念でユーロが売られ,対ユーロで円高が急速に進行。景気減速による需要減で企業の売り上げが減るだけでなく,円高で利益が目減りすることへの懸念も広がり,再び株安が加速し始めた。

10月24日(日経平均終値の前日比:811円90銭↓)
 為替相場で急速に円高が進み,国内の企業業績の悪化懸念がいっそう高まったことから,全面安となった。

 こういうコメントを考えるのがいったい誰なのかは知りませんが,単に結果を見て理由をこじつけているだけのようにも思えます。面白いものです。

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2008年10月25日 (土)

カップめん騒動

 神奈川県藤沢市のスーパーで販売された日清食品の「カップヌードル」に防虫剤が混入し,食べた女性が嘔吐や舌のしびれなどを発症。また,神奈川県横須賀市の生協で販売された「CO・OPカップラーメン」からも殺虫剤の成分が検出されたというニュースがありました。

 これらのカップめんが「実は中国で生産されていた」というオチはなかったわけで,どちらも日本国内の工場での生産。「カップヌードル」は茨城県取手市の日清食品工場で製造され,「CO・OPカップラーメン」の方は埼玉県嵐山町にある明星食品の工場で製造されていたものだそうです。

 ところで,取手市にある日清食品の工場にはカップヌードル型の煙突があり,煙突の煙はカップヌードルから湯気が上がっているように見え,なかなか面白いです。JR常磐線の車窓からもよく見えます。この写真は,たとえばこちらのブログで紹介されています↓

http://blog.goo.ne.jp/cocoro110/e/6c89a582ea783892e22e0401c8e16733

 この白い煙が,ただの湯気なのか排気ガスなのかはわかりませんが,この煙突のデザインはなかなかセンスいいと思います。たとえこの煙突から有害排気ガスを出していたとしても,僕はこのセンスはけっこう好きですね。

 話を元に戻して,「カップヌードル」を販売したにスーパー対して,保健所は賞味期限や製造所が同一の他の日清食品製のカップめんの販売自粛を指導。製造元の日清食品も,問題の商品と同じ日に同じ工場で作られた商品の自主回収に乗り出したとか。また,日本生活協同組合連合会は,「CO・OPカップラーメン」を扱っている全国の加盟生協に,5品目のカップラーメンを店頭から撤去するよう要請したらしい。

 現時点では薬物混入経路が不明なため,安全確保のために商品を撤去するのはやむを得ないのかも知れませんが,こういう事件が発生するたびに関連商品を即回収というのは,なんか違うと僕は思います。食料品に対して,もし誰かが故意に異物を混入させたな場合は(この事件もたぶん故意によるものでしょう),まず防ぎようがない。注射器のような先の細いもので液体を注入したら,カップめんに限らずどんな商品にでも簡単に混入できてしまいます。その意味では,食べる部分がむき出しになっている野菜や果物や魚貝類などの方が,カップめん以上によほど危険と言えます。

 誰がどういう意図でどの商品に混入させたのかがわからない限りは,回収すべき商品の範囲を決めるのは容易じゃありません。同じ種類の商品だけを回収するというのは気休めにすぎないと言えます。スーパーなどの店頭で混入した疑いがあるなら,そのスーパーの食料品すべてを撤去するのがスジということになってしまいます。さらに言えば,中国製冷凍餃子が問題になった際に「中国製冷凍食品は撤去」と判断したような人は,今回の事件を受けて「日本製のカップめんはすべて撤去」と判断するのでしょうか。そう考えると,事故が起こったからといって短絡的に関連商品を関連店舗から撤去するというのは,やはり無理があると思います。

 ということで,故意に異物を混入するというのはまったく許し難い犯罪ではありますが,食品を購入するということは,どこで何を買ってもある一定のリスクを伴うということを消費者は認識するしかないのかも。そして,人口が10倍多い国では,確率的に事件の件数も当然10倍多くなるということでしょう。

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2008年10月24日 (金)

キー確認音

 出張先から戻る列車の中で,僕の隣に座ったおじさんが,キー確認音をピコピコ鳴らしながら携帯を操作していて,やたらうるさかったです。電車の中でホント迷惑。マナーモードにして欲しかったですが,マナーモードでなくても,今どき携帯のキー確認音を鳴らす設定にしている人って超珍しいですよね。

 それにしても,キー確認音ってそもそも何のためにあるんでしょうか。視力が悪い人を補助する機能とも思えないし,その必要性が僕には理解できません。大した話ではありませんが,僕はちょっとしたことが気になってしょうがない性格なんです。

 以前の僕の携帯はドコモで,何回も機種変更しましたが,初期状態は必ずキー確認音が鳴る設定になっていました。このため,新しい携帯を買った時は,充電するよりも何よりもまず,キー確認音を消す設定に変更したものです。携帯をAuに変えてからは,初期設定が鳴らないようになっているのでこの設定変更はやってません。キー確認音が必要なケースなんてほとんどないと思うのに,なんで初期設定が鳴るようになっているのか不思議です。ドコモの携帯って今でもそうなんでしょうか。ちなみに,そのおじさんの携帯はソフトバンクでした。

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2008年10月23日 (木)

ライオンズ優勝!

 プロ野球パリーグのクライマックス・シリーズ(CS)の結果,ライオンズのリーグ日本シリーズ出場が決定。このテレビニュースの中で,ライオンズ球団の正式名称が「埼玉西武ライオンズ」だったということを昨夜初めて知りました。調べたところ,2008年から「西武ライオンズ」は「埼玉西武ライオンズ」に改名していたらしい。

 僕はプロ野球中継やスポーツニュースを最近あまり見なくなったということもありますが,それでも,公式戦終了後のCSの最終戦でチーム名を初めて知るなんて,恥ずかしい限りです。でも,この日のニュースでも,きちんと「埼玉西武ライオンズ」と呼んでいたのはごく一部分のニュースだけ。他のニュースなどでは,キャスターは相変わらず「西武」「西武」と連呼していましたよ。

 そこで,各新聞社のWebニュースを見てみると,ライオンズ優勝のニュースのタイトルは以下のとおり。
  共同「西武,日本ハムを下し日本シリーズ進出」
  毎日「パ・リーグ:西武,4年ぶり日本S出場 CS第2S第5戦」
  朝日「西武,日本シリーズ進出 第2S第5戦,日ハムに9―0」
  読売「西武がCS初制覇,4年ぶり日本S進出」

 このように,タイトルに「埼玉」とか「埼玉西武」とか書いている新聞社は一つもありません。タイトルだから省略しているとも言えますが,記事本文を見ても読売の本文に1箇所だけ「埼玉西武ライオンズ」の表現があるだけで,他にはまったく「埼玉」の文字が出てきません。

 過去にも書いたとおり,マスコミが都市名・地域名を冠したチーム名を正しく報道しないというのは本当に許せません。スタジアムの名前なんかはネーミングライツの関係でコロコロ変わってわけわからん状態になっていても,きちんと正式名称で報道されています。なのにプロ野球のチーム名はマスコミが好き勝手に呼称を変えているのが実態です。本当にわけわかりません。

 ちなみに,現在のプロ野球チームのうち,チーム名に都市名や地域名を入れているのは以下のチームです。テレビでも新聞でもWebニュースでも,これらのチーム名をすべてきちんと正しく伝えているマスコミは皆無だと思います。
  北海道日本ハムファイターズ
  千葉ロッテマリーンズ
  福岡ソフトバンクホークス
  東北楽天ゴールデンイーグルス
  埼玉西武ライオンズ
  横浜ベイスターズ
  広島東洋カープ
  東京ヤクルトスワローズ

 なお,微妙なのは阪神タイガース。「阪神」というのは地域名を表わすことばには違いありませんが,元々は「阪神電鉄」がチーム名の起源だと思うので,除外しています。

 過去の関連記事:プロ野球の球団名(2006年10月29日)

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2008年10月22日 (水)

ちょっといい映画

 最近のCS放送などで見た「ちょっといい映画」をいくつか紹介します。【ネタバレあり】

1.「善き人のためのソナタ」(2006年 ドイツ)
  監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
  出演:ウルリッヒ・ミューエ,マルティナ・ゲデック 他

 舞台は壁崩壊前の東ベルリン。反体制の疑いのある劇作家とその同棲相手を監視するために,国家保安省がアパートに盗聴器を仕掛けて徹底した監視を開始する。しかし,これを盗聴・監視していた大尉は,盗聴内容を通して次第にこの反体制作家の行動に共鳴していくというストーリー。

 旧東ドイツの息が詰まるような監視社会の描写は見事で,恐ろしい国だったと思います。言いたいことはなんでも自由に語れる社会というのは本当にありがたいものです。かつての東側諸国,今の北朝鮮,そして戦前の日本などには,僕は絶対生まれたくなかったですね。

 この大尉が心変わりしたきっかけは,劇作家がアパートで弾いた「善き人のためのソナタ」というピアノ曲を聞いたこと という設定になっていますが,映画での演奏シーンはごく短時間で,僕が聞いた限りでは何のヘンテツもない普通のピアノ曲。この曲を聴いて心変わりするというのはイマイチ理解できませんでした。というより,実際に音や映像でそのものズバリを表現しなければならない映画というのは,小説と違って描写がかえって難しく,酷なものだと思います。

 それはともかく,映画のラストの1~2カットには思わずじ~んとなりました。ひさびさに泣けた映画です。

2.「阿弥陀堂だより」(2002年公開)
  監督:小泉堯史
  出演:寺尾聰,樋口可南子,田村高廣,香川京子 他

 東京から田舎に移住してきた熟年夫婦の晩年を描いた映画。妻は医師で,転居先の無医村で医者として働くという設定。

 医者の妻が医者でない夫に患者の容態をペラペラしゃべってはダメじゃん? と突っ込みたくなりましたが,それはご愛敬としても,なんだか違和感を覚える映画でした。映画が終わって気づいたのですが,この映画には「悪い人」が一人も出てこなかった。こんな映画は珍しく,これが違和感の原因だったと思います。その意味で,ちょっと不思議な感じのする映画でした。

 村での生活が平穏無事で,登場人物が全員いい人で,理想的な仲のいい夫婦で,・・・リアルな世界ではありえませんが,映画だったら成立するんですね。ちょっとくすぐったくなる映画でしたが,たまにはこういう映画をのんびり見るのも疲れなくていいかと思います。ということで,「いい映画」というよりも「いい人ばかりの映画」でした。

3.「クローズドノート」(2007年公開)
  監督:行定勲
  出演:沢尻エリカ,伊勢谷友介,竹内結子,永作博美 他

 沢尻エリカさんの不機嫌な舞台挨拶が有名になった,あの映画です。アパートに引っ越してきた女子大生が,前の住人が置き忘れたノートを読み進めていくという,ちょっとミステリアスでタイムトラベル的なストーリー。

 この映画の年代設定がいつかははっきりしませんが,京都の街のきれいな風景と,古いデザインの冷蔵庫やスクーターや万年筆を売る古風な店など,ノスタルジックな雰囲気が満載で,僕はけっこう楽しめました。道路標識が昔のデザインになってなかった点は突っ込みたくなりましたが,それはともかく,あまり期待していなかった映画だけにちょっとトクした気分です。

4.「ルート225」(2005年公開)
  監督:中村義洋
  出演:多部未華子,岩田力 他

 学校の帰り道に元の世界とは少し違っている「パラレルワールド」に迷い込んでしまった中学生の少女と弟が,元の世界へ戻るために悪戦苦闘するというファンタジー。

 映画というのは,その結末に対して,当然こうなるという「期待感」を観客は持っていて,ほとんどの観客が同じ結末を期待しているのではないかと思います。安易な表現で言うなら「ハッピーエンド」とも言うんでしょうか。

 この映画の結末も,当然こうなるという期待感があり,そのラストへ向かう盛り上げ方は非常に上手いです。ところが,その期待とはちょっと違って・・・という,結末の意外性が素晴らしいです。かといって「悲劇の結末」というわけでもなく,例えれば,水戸黄門がラストであの印籠を見せずに自力で相手をやっつけたみたいな,ちょっとひねったハッピーエンドとでも言うべきでしょうか。

 それにしても,14歳の女子中学生を演じた多部未華子さんが,なかなかいい味を出していたと思います。僕はSFっぽい映画が好きという理由で,あまり期待せずに見た映画ですが,これも期待以上に良かったです。

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2008年10月19日 (日)

明治村

 出張で名古屋近辺に滞在中です。今日は休みだったので,愛知県犬山市にある「明治村」に行って来ました。名古屋から犬山市までは名鉄で約30分,そして犬山駅前から明治村まではバスで約20分。しかも,休日なのにバスが1時間に2~3本しかなく,ちょっと不便でしたね。

 その犬山駅前の,明治村行きのバス停がこれ↓

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 「犬山中央病院」「犬山ニュータウン」「長者町団地」という犬山市内の超ローカルな行先と並んで,なんと「京都駅八条口」行きが! 距離感がなんとも怪しい,ワープな雰囲気のするバス停です。でも,「京都行き高速バス」と書かずにごく普通に「京都駅八条口」と書いてあるところがなんとも素敵です。

 ということで,何かと京都に縁のある明治村ですが,この明治村には,既に廃止となった京都市電が走っています↓

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 線路の幅の広いかつての市電でなく,その一世代前の,線路の幅が狭い方のチンチン電車。かつて国鉄京都駅前~北野天満宮を運行していた路線で,日本国内で初めて営業した電気鉄道だそうです。僕はたぶん子供の頃に乗ったことがあるはずですが,記憶にはありません。

 そして,京都にちなんだ建物として「聖ザビエル天主堂」↓

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 京都の河原町三条にある教会の建物ですが,かなり昔に教会の土地の一部がホテルとなり,この建物は撤去されて今は明治村で復元保存されているというわけです。したがって,この建物も子供の頃に何度も見ているはず。でも,僕の記憶では,こんなに真っ白でなくてもう少し黄色っぽい色でした。子供の時の記憶ってアテにならないものです。

 明治村は「博物館明治村」というのが正式名称だそうです。ここには約70の明治時代の建造物が保存されていますが,「博物館」という名のとおり,建物だけでなく,建物内にはいろんな展示物などもあり,明治時代を経験していなくても「懐かしさ」が感じられるし,見ていて飽きません。そして,村全体の建物の配置や景観なども,なかなかよくできているなと感心しました。

 「長崎居留地二十五番館」という建物の中には,あの軍艦島の模型(廃墟になる前の姿)や,人が住んでいた頃の軍艦島の写真が展示されていましたよ↓

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 明治時代の監獄(雑居房)の中にも入ってみました。一度監獄の中に入ってみたかったんです(笑) 貴重な体験かも。牢の中からの写真がこれ↓

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2008年10月15日 (水)

時が滲む朝

 昨日の続きで,第139回芥川賞を受賞した楊逸(ヤン・イー)さん作「時が滲む朝」の感想。

 この小説は,中国の民主化運動に加わった2人の大学生の天安門事件での挫折と,その後の北京五輪までの人生を描いたもの。芥川賞選考委員の石原慎太郎氏が「日本語としてはかなり滑らかだが,まだ妙な表現がないではない」とコメントした点が気になったので,本当にそんなおかしな表現があるのか,注意深く読んでみました。で,僕が気になった箇所は,たとえばここ↓

 冬の夜は実に長い,朝5時になってもまだ真っ暗で,寒空の薄い月の影に,星たちが気だるそう散らばっている。・・・

 この「冬の夜は実に長い,朝5時に・・・」の「,」は正しくは「。」でしょうね。または,「冬の夜は実に長く,朝5時に・・・」とすべきでしょうか。このように,少し気になる点がいくつかありましたが,石原氏が言うほどには,全体的に日本語としての不自然さはまったく感じられませんでした。外国文学の翻訳文なんかよりも遙かに読みやすかったです。

 芥川賞選考委員の選評が文藝春秋9月号に掲載されていていましたが,この中で石原慎太郎氏や村上龍氏はこの作品を酷評していましたね。というか,村上龍氏の場合は,この小説の「学生運動に挫折する中国の若者」というテーマに興味が持てなかったとコメントされています。

 民主化運動に情熱を燃やした当時の中国人学生の「純粋さ」に対しては,かつての日本の初期の学生運動にあったと思われる「素朴さ」「ひたむきさ」に通じるものがあり,ある種の「懐かしさ」を感じることができたし,読んだ後はなんとなく じ~んと来る,味わいのある小説だったというのが僕の感想です。もっとも,この「純粋さ」は,村上龍氏に言わせると「単なる無知」ということになるみたいですが。

 余談ですが,芥川賞受賞作家である村上龍氏の本名は,なんと「龍之介」だそうで,芥川龍之介と同じ名前では恐れ多いという理由でペンネームを「龍」にしたらしいですね。

 そして,同じ号の文藝春秋には作者の楊逸さんの受賞者インタビューも掲載されていましたが,それによると,楊さんは,この小説の主人公よりも遙かに悲惨な境遇に育った波瀾万丈の人生。皮肉なことに,小説よりもこのリアルなインタビュー記事の方が僕には怖くて迫力がありました。

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2008年10月14日 (火)

外国映画と日本映画

 映画館で上映される外国映画というのは,昔は「字幕スーパー」が当たり前でしたが,最近は低年齢層向け映画を中心に「吹き替え」版の映画が上映されることが多くなったみたいです。もっとも,低年齢層だけでなく,最近は若い人を中心に「吹き替えの方がいい」という人が増えているという話を聞いたことがあります。なんでも,字幕は「読むのが面倒」だとか「疲れる」とかいう理由らしい。

 映画の字幕スーパーというのは非常によくできていて,短時間でもテンポよく読めて,かつ違和感なく映画の中に溶け込めるように工夫されていると感じます。外国映画を見るのに字幕は疲れるので吹き替えの方がいいだなんて,僕にはちょっと理解できませんが,それはともかく,字幕のせいではなく,僕は外国映画って「疲れる」と感じることがたびたびあります。

 たとえば最近BSで見た「再会の時」(1983年アメリカ)という映画。ある男性の自殺をきっかけに学生時代の仲間の男女8人が集まり,昔を懐かしみながら少しの間共同生活をするというストーリー。終わってみると,なかなか渋くて「いい映画」だったと思いますが,この映画を見ていてつらかったのは,同世代の8人もの人間が登場したため,いつまで経っても顔と名前が一致せずにストーリーがなかなか飲み込めなかったこと。登場人物の名前を覚えるのがこれだけ苦痛だった映画というのも珍しいです。いくら字幕があっても,日本人にとってカタカナの人名を覚えるのは容易じゃないということを痛感しました。

 日本人の僕にとって,日本人の人名が覚えやすいというだけでなく,日本語の微妙な言い回しやジョークが理解できたり,日本人にしか理解できない微妙な空気が感じ取れたりするなど,やはり外国映画よりも日本映画を見ている方が断然ラクだし楽しいです。そんなわけで,特に最近は,僕が見る映画は日本映画が8割ぐらいと圧倒的に多いですね。

 映画に限らず,小説も同じ。外国語を翻訳した小説というのは読んでいてホント疲れます。映画と同様に,やはりカタカナの人物名というのは視覚効果の高い漢字表記にはかなわず,なかなか覚えられません。そして,読んだら明らかに翻訳文だとわかるような独特の言い回しがあるとスムーズに読めなくて非常に疲れます。あと,英語ではダッシュ「――」で文章を囲むような表現がよくありますが,日本語表記ではこれはほとんど使われてません。にもかかわらず,翻訳文にそのままダッシュを表記している翻訳者が多いのにはあきれます。僕的には,日本語でのダッシュ表記は絶対許せません。というわけで,外国文学の翻訳は最近滅多に読まなくなりました。

 ところで,今年の7月,第139回芥川賞に中国人の楊逸(ヤン・イー)さん作の「時が滲む朝」が選ばれました。日本語を母語としない外国人の芥川賞受賞は初めてとのことで,画期的です。芥川賞を受賞したということは日本語表現としてはまったく問題ないはずですが,選考委員の一人の石原慎太郎氏は,以前の記者会見で「日本語としてはかなり滑らかだが,まだ妙な表現がないではない」とコメントしていました。本当にそうなのか,中国出身の人の日本語がどんなのか,非常に興味があったので読んでみました・・・続きは明日。

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2008年10月11日 (土)

教えてほしい

 1981年の米ロサンゼルス銃撃事件に関与したとしてサイパンで逮捕された三浦和義氏が,ロサンゼルス市内で自殺したとか。この自殺の原因はよくわかりませんが,三浦氏がこの事件の真犯人だったかどうかは結局わからないまま,この事件は幕引きとなるようです。

 ところで,たとえば外国人が日本国内で日本の法律に違反する罪を犯して海外へ逃亡したような場合,国際手配によってその容疑者を逮捕したら,身柄を日本に移して日本の法律で裁判をするべきだというのが僕の認識です。ところが,このロス銃撃事件は,米国での殺人事件にもかかわらず,容疑者が日本で裁判を受けて日本の法律の下で無罪が確定しています。

 日本で無罪が確定した人を米国が逮捕できるのかという「一事不再理」の問題がマスコミなどに取り上げられていますが,そもそも一事不再理の問題以前に,日本人が外国で犯した罪に対して,日本の法律に基づいて日本で裁判するということ自体の妥当性が僕にはよく理解できません。この事件の真相について僕は興味ないので,真犯人が誰でもかまいませんが,僕が知りたかったのは,ロスでの殺人事件をなんで日本の警察・検察が立件して日本で裁判できたのかという点だけです。報道番組などで誰もこの点をはっきり解説してくれないのが残念です。

 次に,標準報酬月額の改ざんの問題。これは,事業主が納める保険料の負担軽減と社会保険庁の保険料徴収率アップを目的として,標準報酬月額を書き換えて保険料を低くしていたという事件ですが,これは,本来の標準報酬月額に見合った保険料を給与から天引きしたにもかかわらず,その保険料よりも低い額しか納付していなかったということ。つまり,従業員の給与の一部を会社が着服したということですよね。

 この事件は,年金給付者への給付額が本来受け取れる額よりも低くなってしまったという点だけが問題視されていますが,問題の本質はそれだけでなく,事業主が従業員の給与の一部を着服したという意味で,詐欺とか窃盗とかの刑事事件として扱うべき問題でしょう。なぜそういう声がどこからも上がってこないのか,教えてほしいものです。

 もう一つ僕がわからないのは,事故米流出問題に関して。汚染された事故米の流出経路や流出量などが問題視されていますが,それよりも僕が知りたいのは,外国から輸入した米には700%を超える関税がかかると言われており,そんな高価な米を誰が買って倉庫にストックしているのか? もし政府が買っているならいくらで転売しているのか(関税分はきちんと上乗せされているのか)? もし差額を政府が負担して転売しているなら,そもそも関税をかけている意味が全然ないのでは? などなど。単に僕が無知なだけかも知れませんが,米の輸入に関してはわからないことだらけです。誰かきちんと教えて欲しいものです。

 過去の関連記事:
  ロス疑惑(2008年2月26日)
  標準報酬の改ざん(2008年9月10日)

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2008年10月 9日 (木)

ノーベル賞

 ノーベル物理学賞に小林誠氏・益川敏英氏・南部陽一郎氏が受賞。続いてノーベル化学賞に下村脩氏ら3人が受賞。相次ぐ日本人の受賞でマスコミはなんだか大騒ぎしていますが,この騒ぎ,なんだか日本人選手がオリンピックでメダルを取った時の騒ぎに似てるような気がします。

 特に,化学賞を受賞した下村氏の場合は,1982年以降は米国の海洋生物学研究所の研究員で,退任後の今も米国に在住。氏の国籍がたまたま日本人だったというだけでしょう。にもかかわらず,「日本の研究水準は高い」とか,「1年に4名の日本人受賞は画期的」とか騒ぐのは,日本人としてちょっと恥ずかしいです。日本人のノーベル賞受賞にケチをつける気は毛頭ありませんが,マスコミの扱い方はレベルが低く,僕にはちょっと違和感を覚えます。素直じゃなくてすみません。

 ところで,ノーベル賞を受賞するような研究というのは,個人の力だけではなく,研究チームのメンバーや,大学や会社などの組織の力に依るところも大きいでしょう。にもかかわらず,ノーベル賞の受賞はほとんどが個人名。この点も僕はちょっと気になります。研究チームのリーダーが代表で受賞するとしても,高額の賞金の配分が,その研究の貢献度に応じて適切に関係者に配分されているのかと,ケチな性格の僕としては気になるところです。

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2008年10月 7日 (火)

未来技術遺産

 国立科学博物館は,科学技術の発達史で重要な成果を示した重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)の登録制度を始め,第1回として23件を登録したとか。この未来技術遺産は,「科学技術発展の重要な側面や段階を示すもの」「新たな分野の創造に寄与したもの」「失敗事例など技術継承上で教育的な価値があるもの」「新たな生活様式の創出や経済の発展に貢献があったもの」などが選ばれるそうです↓
http://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/17924.pdf

 選定根拠がイマイチ不明確で,決め方がなんとなくお役所的でぱっとしない企画のように思えましたが,それでも,こういう古い機械や道具を見るのは大好きだし,何よりも,これを発明した人にはほんと頭が下がる思いです。

 この中で,僕にとって特に印象に残ったのは以下のものです。(説明文と写真はいずれも国立科学博物館ホームページから転載)

1.真空管式電子計算機(製作年:1950年代)

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選定理由:わが国で最初期に開発された電子計算機である。大阪大学では終戦直後から電子計算機の研究を開始し,1950年に世界初の電子計算機と言われるENIAC型の演算装置を試作した。その延長線上で,真空管式のコンピュータの開発に着手し,本機は1959年に基本動作を確認した。本機は,日本のコンピュータ開発の先鞭をつけただけでなく,その後の研究開発に貢献した日本コンピュータ史上さきがけとなった装置である。

 「真空管(死語?)で作った電子計算機」というのは,原理的には可能という話は聞いたことがありましたが,現実には大量の真空管で構成すると「球切れ」の確率が高くて実用にならないと思っていました。でも,実際に開発された実物があったんですね。驚きました。

2.噴水型飲料用自動販売機(製作年:1962年)

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選定理由:販売商品を美味しく見せる画期的なディスプレイ方法により,一躍自販機を普及させるきっかけを作った製品である。冷凍装置が初めて自販機技術として持ち込まれ,以後飲料機の欠かせない技術になった。紙カップ式飲料を消費者に馴染ませた。これが「飲料のその場消費」を導き,飲料自販機産業化に大きな貢献をすると同時に,一般大衆の飲食文化に多大な影響を与えた。

 技術的にどうのというよりも,ジュースの自販機の噴水ディスプレイが超懐かしいです。僕が子供の頃,近くの商店街にこれが置かれていて,値段は紙コップ1杯10円でした。でも,10円というのは当時の子供にとっては大金。一度飲んでみたくてたまらなくなって,ある日「半分でいい!」と思って5円硬貨を投入しところ,当然商品は出てこず,お金も返ってこなくて,悲しい思いをした記憶があります。

3.世界初のオールトランジスタ電卓(製作年:1964年)

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選定理由:世界初のオール・トランジスタ,オール・ダイオード採用の電子式卓上計算機である。535,000 円と,当時の代表的な乗用車とほぼ同じ価格にも拘わらず,従来の機械式に比して,計算が速く音が静かであることが評価を得て,国内外で予想を上回る売れ行きを見せた。論理演算子として最初からトランジスタを使ったことがIC化,LSI化に結びつき,その後の電卓の小型軽量化,大衆化を推進させる源流となった,電卓史上記念すべき製品である。

4.電子式卓上計算機 カシオミニ(製作年:1972年)

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選定理由:電卓を一般公衆に普及させる契機となった記念碑的製品である。「答え一発,カシオミニ」のキャッチフレーズで爆発的な人気を呼び,電卓をオフィスユースから一般家庭・個人にまで浸透させ,幾多のパーソナル情報機器開発の礎を作った。読み,書き,ソロバンと言われた日本人古来の技能のひとつであるソロバンに代替する手段を提供し,日本人の生活に大きな影響を与えた。

 理系大学に通っていた僕にとって,関数電卓は必需品でしたが,ちょうど電卓が普及していた時期で,ほんと助かりました。複雑な関数計算を先人はどうやっていたのかと不思議に思ったものです(計算尺とか?)。それにしても,シャープ製の世界初の電卓が1960年代,しかも50万円を超える価格とは,驚きです。

5.VHS方式家庭用ビデオ(製作年:1976年)

Photo_5

選定理由:本機はVHS方式家庭用ビデオの第一号機であり,急速に普及した家庭用ビデオの原点とも言える製品である。VHS 方式は,その後世界の標準規格となり,2006年には全世界の生産累計が9億台を超えたといわれる。本機は,長時間録画・高画質・小型・軽量という設計であり,後の家庭用ビデオのプロトタイプとなった。急速な家庭用ビデオの普及は,全世界に新たな生活文化を創出したと言え,国際的に見て一時代を画す顕著な貢献をした。

 知る人ぞ知る,日本人が発明した世界標準規格VHS方式ビデオですね。僕が初めてホームビデオを買ったのは1980年代以降ですが,当時は30万円ぐらいだった記憶があります。今だったら,こんなお金は絶対出せません。

 なお,今回登録された23件の未来技術遺産は,以下のとおり。
(1)特別高圧油入変圧器(現存最古の変圧器)
(2)巡洋戦艦「金剛」搭載ヤーロー式ボイラー(現存最古級の艦艇用ボイラー)
(3)TYK無線電話機(世界初の無線電話)
(4)手吹き式ガラス円筒(日本最古級の板ガラス用ガラス円筒)
(5)高柳式テレビジョン「イ」の字書き雲母板(世界初のブラウン管式テレビの被写体)
(6)分割陽極マグネトロン(マイクロ波技術への世界的貢献)
(7)依佐美送信所送信装置一式(ヨーロッパとの電波のかけ橋)
(8)第1号ナイロン紡糸機(日本初のナイロン製造装置)
(9)国産初期の硬質塩化ビニール管サンプル
(10)国産大型舶用ディーゼル実験機関(日本初の排気過給機付きディーゼル機関)
(11)溶炉図面42枚(銅精錬技術革新を示す)
(12)空気湿電池300型
(13)旧千葉火力発電所1号機タービン発電機(戦後初の火力発電用タービン)
(14)大阪大学真空管式計算機一式(日本最初期の真空管式電子計算機)
(15)パイロット計算機KT-PILOT(世界に先駆けたマイクロプログラム方式コンピューター)
(16)噴水型飲料用自動販売機(自販機普及のさきがけ)
(17)電子式卓上計算機コンペットCS-10A(世界初のオールトランジスタ電卓)
(18)喜撰山発電所フランシス形ポンプ水車(世界最大容量だった揚水発電用水車)
(19)電子式卓上計算機カシオミニ(電卓普及の契機になった)
(20)VHS方式家庭用ビデオHR-3300(世界標準となったVTR)
(21)SCARA試作機(世界で定番となった産業用ロボット)
(22)縮小投影型露光装置NSR-1505G2A(世界を席巻した集積回路の製造装置)
(23)H2ロケット7号機(初の純国産ロケット)

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2008年10月 5日 (日)

どげんかせんと

 最近はわけわからんニュースが多くて突っ込みどころ満載のため,何を書いたらいいのか迷いますが,先日宮崎県庁へ出張した際,幸か不幸か,本庁の入口で東国原(「ひがしこくばる」から変換できん!)知事が出てくるところにばったり出くわしました。一瞬目が合った(ような気がした)ので,知事に向けてギャグを一発かましたかったところですが,咄嗟のことでこちらは準備不足。ちょっと悔しかったですが,せっかくの「ご縁」なので,本日は,東国原知事の国政への転身が噂されている件について突っ込んでみたいと思います。

 報道によると,東国原知事は,次の総選挙への立候補をとりやめた宮崎1区の中山前国交相の後継として自民党執行部が擁立を検討していることについて,「自民党が候補を立てられなかったりすると,選択肢は民主党と共産党しかない。宮崎県にとってはどうか」などと述べ,国政転身に意欲を示したらしい。また,「地方切り捨ての格差社会にしたのは,国政であり,自民党。自民党をどげんかせんといかん」とも。

 地元宮崎県では東国原知事には絶大な支持と人気があるらしいですが,宮崎県人でない外野の僕には,なんでこの人に人気があるのかはまったくわかりません。それはともかく,東国原氏は,もともと無所属で政党の推薦無しに知事選に臨み,各政党の推薦候補を破って当選した人。にもかかわらず,その人の擁立を検討してるという自民党は「地元人気頼み」なのは見え見え。この無節操さは論外としても,知事本人の発言もけっこう節操ないと感じます。「国政が悪いのは自民党のせい」と言いながら,一方では「自民党が候補を立てられないのはまずい」,つまり「自分が自民の公認候補またはそれに代わる候補で立候補したい」とも取れる発言はなんだか支離滅裂です。

 知事は総選挙に立候補するに際しては県民世論などを見極めた上で判断する考えも示しているようですが,いずれにしても,任期途中で投げ出すような人はあまり信用できません。「人気」よりも「任期」を全うすることが第一だと思います。

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2008年10月 4日 (土)

携帯の料金体系

 わが家の家族5人の携帯は,Au派は僕を含めて2人で,ドコモ派は3人。家族割引などをフル活用していますが,それでも携帯関連の費用は家族合計で毎月約5万円。携帯が普及していないほんの10年前までは不要な出費だったのに,所得が増えなくなった今はホント頭の痛い出費です。

 それでも,パケット定額サービスの導入などがあり,昔に比べたら携帯の費用も安くなっているのかなと思います。でも,携帯の料金体系って理不尽な点が多く,ほんと頭を悩ませてくれます。

 ドコモを例に取ると,最も理不尽だと思うのが「バリュープラン」。これは,従来の料金体系では端末購入代金が月々の支払いに上乗せされていたのに対し,905i発売以降に導入された「バリュープラン」では,端末購入代金が別扱い(一括または分割で支払い)になった代わりに,月々の基本料が下がったもの。これはこれで明朗でいいし,端末を長く使う人にとっては助かる価格設定だとは思いますが,905iよりも前の機種を使用している人は,使用後何年も経過して端末代金相当額は支払い済になっているもかかわらず,端末を新規に購入しない限りは従来の料金プランしか選べず,いつまでも端末代金相当額を支払い続けなければならないということですよね。これ,めちゃくちゃ理不尽だと思います。

 そして,料金プランは「タイプSS」「タイプS」「タイプM」のように別れていて,基本料金が増えると無料通話分が増え,かつ高額のコースになると無料通話を超える分の通話料金(単位時間あたり)も安くなるという設定になっています。でも,毎月の通話時間が一定なわけはないので,どのプランが最適かというのは結果でしかわからない。どれを選ぶべきかは超難しいし,結果的に損したかトクしたかを毎月チェックするほどヒマじゃないので,こういうタイプを選ばせる料金体系というのはほんと腹立たしいです。毎月の通話料に応じて自動的に最低額になるようなプランをぜひ導入して欲しいものです。

 さらに,パケット定額サービスについて。これまでの「パケ・ホーダイ」は月額3,900円固定で,フルブラウザ以外は使い放題で,フルブラウザも使い放題になる「パケ・ホーダイ フル」は5,700円固定という料金設定でした。これに加えて,この10月から「パケ・ホーダイ ダブル」というのが導入されました。これは,12,250パケットまでは980円で,それを超えるパケットは1パケットあたり0.08円が加算され,最大4,200円で頭打ちになるというもの(いずれも税抜き価格)↓

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  (NTTドコモのホームページより転載)

 このプランの場合,フルブラウザを使用しても最大5,700円と従来の「パケ・ホーダイ フル」と同額。つまり,「パケ・ホーダイ フル」に加入していた人は「パケ・ホーダイ ダブル」に切り換えても損になることはなく,使用量が少なかったりフルブラウザを使用しなかったりした場合を考えると,「パケ・ホーダイ ダブル」に切り換えておけば安心ということでしょう。いずれ「パケ・ホーダイ フル」はフルくなって消滅するのかも知れません。

 ところが,現在「パケ・ホーダイ」に加入している人の場合,「パケ・ホーダイ ダブル」に切り換えるべきかどうかというのはめちゃ悩みます。「パケ・ホーダイ」の固定額3,900円に対して,「パケ・ホーダイ ダブル」の上限額は4,200円とアップしているため,どちらがトクかは人それぞれ。計算したところ,パケット使用料が48,750パケットまでの場合は「パケ・ホーダイ ダブル」の方がトクで,それを超える場合は従来の「パケ・ホーダイ」の方がトクという計算になりますが,ドコモの案内にはここまで記載されていません(もし計算間違いだったらすみません)。

 普通にパケット通信を多用している人は48,750パケットを軽く超えると思うので「パケ・ホーダイ」の方がトクと言えます。にもかかわらず今後は「パケ・ホーダイ ダブル」を選択する人が増えそうな気がするので,これって実質「値上げ」になるということですね。逆に,パケット使用量の少ない人にとっては,この「48,750パケット」というのはけっこう微妙な数値。ほんと悩ませる料金プランを提供してくれるものです。

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