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2008年8月27日 (水)

刑事訴訟法改正

 刑事裁判で犯罪被害者や遺族が被告に対して質問などができる「被害者参加制度」を盛り込んだ改正刑事訴訟法が2007年6月に成立していますが,政府はこの法律の施行日を12月1日とする方向で調整に入ったそうです。

 この制度は,「被害者が蚊帳の外に置かれている」などと主張する被害者団体側の強い要望を受けて成立したもので,対象となる裁判は,殺人・強姦・誘拐・業務上過失致死傷などの重大事件。被害者らが希望して裁判所が許可した場合に「被害者参加人」として検察官の隣に座り,被告に事実関係を直接質問したり証人に被告の情状を尋問できたりするそうです。検察官の論告求刑の後で,法律の範囲内で量刑意見を述べることもできるとか。

 以前の記事にも書きましたが,刑事裁判というのは,起訴された犯罪事実が正しいかどうか,および,犯罪事実があった場合にはその量刑を客観的証拠と法律に基づいて判断する場です。被害者や,被害者の遺族や,加害者の親族などの利害関係者の「出る幕」ではないと思います。判決が出ていない段階で関係者が口出しして議論するなんて,裁判が「学級会」化してしまうような気がします。

 刑事裁判の場合,被告が実際に罪を犯した場合と無実の場合がありますが,それぞれの場合について,被告が犯行を認めている場合と認めていない場合があり,計4とおりの組合せがあります(無実なのに犯行を認めるというのはレアケースですが,身内をかばったりヤクザの親分の身代わりになったりしたような場合にはあり得ます)。被害者が無実の人に対して直接質問したとしても意味ないし,話がかみ合わないだけでしょう。被告が実際に罪を犯したのにそれを認めていないような場合にも,同様に話がかみ合わないでしょう。

 この制度の目的はイマイチはっきりわかりませんが,被害者の心情を法廷で吐露することによって原告(検察側)を有利にすることが目的なら,被害者が証人として出廷して証言するだけでも十分でしょう。

 それが目的ではなく,「被害者の心情を被告に直接訴えたい」というだけの目的であれば,裁判の中ではなく,裁判官も裁判員もいない場所でそういう機会を設けられるような法改正をすればいいだけのこと。あるいは,特別な機会を設けなくても,被告人への面会という形でそれを実現することも可能だと思います。

 また,検察官の論告求刑の後で,被害者が量刑意見を述べることもできるようになるそうですが,もともと検察は可能な範囲で最も重い量刑を要求するのが仕事なので,被害者がそれ以上の量刑を述べるとも思えないし,仮に述べても裁判官が求刑以上の判決を出すことは考えられません。逆に,被害者が求刑よりも軽い量刑を要求するというのも,検察の立場としては困ることになりますね。極端な場合,もしキリストのような被害者がいたら,検察の意に反して「あなたの罪を許します」みたいな発言をするかも知れませんよ。

 そんな折り,愛知県で警察官ら4人が死傷した発砲立てこもり事件の公判が名古屋地裁であり,被害者の遺族らが意見陳述し,家族を亡くした悲しみや被告に対する怒りを訴えたというニュースがありました。この中で,殉職した警部の妻は,「娘が仏壇の主人の写真に話しかける姿を見るとやりきれない」などと悲しみを吐露し,そのうえで「どんな判決が下されても心の傷は消えないが,一番重い刑を望みます」と述べたとか。

 実際にこういう意見陳述の機会があり,しかも「一番重い刑を望みます」と,量刑に対する希望までしっかり述べられています。現行法でここまでできるのなら,これで十分ではないでしょうか。制度を改定する必要性が僕にはよくわかりません。

 過去の関連記事:被害者参加制度(2007年4月22日)

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