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2008年8月31日 (日)

偽計業務妨害

 デンバーで開会中の米民主党大会で,オバマ上院議員を狙った暗殺計画が明らかになり,ライフルなどを所持していた男ら3人が逮捕されたらしい。容疑者の1人はオバマ上院議員暗殺のためにデンバーに来たことを認め,「約700m離れた高台からライフルで撃とうとしていた」と語っているとか。

 さすがにアメリカは物騒な国ですが,日本でも,ネットの掲示板で「皇太子を殺す」との殺害予告をしたとして,警視庁が岐阜県在住の容疑者を偽計業務妨害の疑いで逮捕したというニュースがありました。もっとも,オバマ上院議員の場合は具体的に暗殺計画を立てて行動に移していたのに対して,日本での「事件」は何も具体性がなく,単にネットで書き込んだだけというもの。このため,容疑は殺人未遂でもなんでもなく,単なる偽計業務妨害。つまり,このウソの書き込みが警察署員の通常業務を妨害したという容疑だそうです。

 ネットで殺人予告だなんて,とんでもない不愉快な行為だと思いますが,厳重に身辺警備されたVIPの暗殺というのは,たとえプロの殺し屋でも実行が困難でしょう。対象がVIPであればあるほど非現実的であり,しかも,この容疑者の場合は東京から何百キロも離れた遠隔地に住んでいる人間。具体的な行動を何も伴わないネットの書込みだけで摘発するというのは,かなり無理があるような気がします。

 だからといって,偽計業務妨害での摘発というのもちょっと苦しい。その書込みが「警察署員の通常業務を妨害した」ことをきちんと立証できるとは思えません。ていうか,僕としては「そんなイタズラ書きで通常業務を停滞させるなよ!」って思います。この容疑は立件が難しいような気がするので,むしろ,対象が皇室だったこともあり,ネットでの犯罪予告などの書込みに対して当局は厳正に対処するという,一種の「見せしめ」的な効果を狙ったのかも知れませんね。

 それにしても,このニュースで気になったのは,警察組織がネットの書込み内容を常に監視しているということと,然るべき公的機関が権力を行使して調査すれば,ネット上で書き込んだ人間を簡単に特定できてしまうということ。

 犯罪予告などは論外として,そこまでいかなくても,ネットの匿名性を隠れ蓑にして非常識な書込みをやりたい放題やっている人間は世の中にいっぱいいます。こういう非常識な行為にブレーキをかける効果は期待できるかも知れませんが,それでも,ネットの内容を常時誰かに監視されているかと思うと,ちょっと気色悪いですね。もし「皇太子&殺人計画」なんていうキーワードでブログを検索されたら,まさに今書いているこの記事がヒットしてしまうわけで,そう考えるとちょっと恐いです。

 そして,何よりも気になったのは,この「偽計業務妨害」というのがどの範囲にまで及ぶのかということ。どこまでが刑事事件の範囲でどこまでが民事の範囲なのかがはっきりしないし,この「業務」というのが,警察署員などの公務員の業務だけが対象なのか民間人にも及ぶのかもよくわかりませんが,「通常業務を妨害した」として摘発されるのなら,拡大解釈したらネット上の多くの書き込みに対しても犯罪が成立してしまうような気がします。たとえば,ある政治家に批判的な記事を書いたような場合,もしその中に誤った記載があったりすると,その政治家がその記事を読んだり反論することによって「通常業務を妨害された」と訴えるというケースがあるかも知れません。ということで,いろんな意味で,ちょっと気持ちの悪いニュースでした。

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