« 水道水の品質 | トップページ | 帰省してきました »

2008年8月14日 (木)

失敗の予感

 日本とインドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づき,インドネシア人の看護師・介護福祉士の候補者205人が8月7日に来日。海外から看護・介護分野の労働者を本格的に受け入れるのは初めて。候補者は半年間の日本語研修をへて病院・施設内で実務研修をしながら3年後の国家試験合格を目指し,合格した場合には引き続き就労が認められるとか・・・この話題は多くのメディアで取り上げられましたが,はっきり言って「たぶん失敗する」と思います。

 日本での受け入れ枠は2年間で看護師400人と介護福祉士600人だったものの,初年度の応募は低調で,予定の約6割にとどまったそうです。これには,この制度を推進しているインドネシア政府の意志に反して,インドネシアの実務者側が非協力的だったことが原因。インドネシア国内の医療現場で過酷な労働環境と低賃金を強いられている中で,ごく一部の人が日本で好条件の職を得ても看護師全体にとってはプラスにならないと現場は判断しているようです。それに,今回の募集で,何人もの看護師が一気に日本行きを決めたことで混乱している医療現場もあるとか。

 応募した人には「自分のキャリアにプラスになる」「日本の進んだ医療・看護技術を学んでインドネシアで生かしたい」という声があるみたいですが,やはり収入目的の人も多いでしょう。日本で働けば月給は最低175,000円とかで,インドネシアで働いた場合の約10倍の収入になるそうです。仮に日本で,月給20万円の介護士の人が「外国へ行けば月収200万!」とかいう募集があったら,そりゃ食指が動くでしょう。でも,今の日本で20万円弱の月収では,日本国内で生活するのは大変です。もし「お金に目がくらんで」応募した人がいたとしたら,たぶん落胆すると思いますよ。

 しかも,受け入れる側の日本の現場も消極的らしい。日本人と同等以上の給与支払いが義務づけられているのはいいとしても,それだけでなく,宿舎の提供や日本語学校や看護学校などに通う費用負担なども,受け入れ側施設に義務づけているとか。そこまでやっても,3年後に国家試験に合格しなければ当人は帰国となってしまいます。それに,この国家試験,日本語の長文読解力が必要とかで,かなり難しいらしい。結局は,対応を施設側まかせにしている厚労省自体が,この制度に対してあまりやる気がないということなんでしょう。

 そもそも,介護・看護というのは,人と人との「ふれ合い」であり,非常にデリケートな仕事。日本人どうしであっても難しい対人上の問題を外国の人が克服できるのかは非常に心配です。看護・介護される側にとっても,ことばが完璧に通じない人に対して不安があるのは,正直な気持ちでしょう。

 それだけでなく,今やビジネス化しているとはいえ,やはり介護=奉仕という古い概念がつきまといます。いくらビジネスであり対価を支払うとはいえ,老後の日本人を外国の人に介護してもらうというのは,日本人がやりたがらない仕事を外国人に押しつけているようで,なんともいえない「申し訳なさ」を感じます。

 ということで,このインドネシアからの看護・介護分野の労働者受け入れは,どう考えても成功しそうにないプロジェクトだと感じました。

|

« 水道水の品質 | トップページ | 帰省してきました »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/149573/42164741

この記事へのトラックバック一覧です: 失敗の予感:

« 水道水の品質 | トップページ | 帰省してきました »