« 帰省してきました | トップページ | 横尾忠則展 »

2008年8月18日 (月)

火垂るの墓

 野坂昭如氏の直木賞受賞作「火垂るの墓」と言えば,高畑勲監督のアニメ版(1988年)が有名ですが,同名映画の実写版が今公開されています(監督:日向寺太郎,出演:吉武怜朗,畠山彩奈,松坂慶子,松田聖子 ほか)。7月に公開されたこの映画は,関東地区では東京の岩波ホールでしか見られませんが,関西では京阪神各都市で上映中のため,帰省中に京都で見てきました。【以下,ネタバレあり】

 この物語は,太平洋戦争末期から戦後にかけての神戸が舞台で,両親を亡くした兄妹が飢えと闘いながら必死で生き抜こうとする兄妹愛を描いたものです。昔見たアニメ版は,重苦しくて切なくて哀れで,涙なくしては見られない映画でした・・・ということで,この実写版も大いに期待しました。

 全体的な感想としては,アニメ版の雰囲気がよく再現されているものの,「泣ける映画」ではなかったです。この物語は,両親を亡くした兄妹が頼った先の親戚のおばさんの「えげつない意地悪さ」がひとつのポイントで,アニメ版はそれが巧みに表現されていて兄妹への同情を誘っていたと思いますが,実写版で松坂慶子さん扮する未亡人は,アニメ版とはちょっとキャラが違ってました。この時代にしてはありえない「ぽっちゃり系」だったのはご愛敬としても,イマイチ「意地悪さ」が足りない。アニメ版のおばさんは,マジきつかったのに。

 それと,食糧難のこの時代に,疎遠な親戚の子どもに突然訪ねてこられたら,やっぱり本心は迷惑だろうなと思うし,兄妹の母親から預かった着物を売って工面して食料を手に入れるというのも,兄妹に食べさせるためにはある意味しかたないことだと思うので,この未亡人にいくらかは同情できました。

 もう一つ違和感があったのが,この兄妹が,食事を終えて「ごちそうさま」と言って片付けをせずにそのまま席を立っていたこと。セルフサービスの我が家では,食事を終えたら,使った食器は各自がキチンとキッチンに持っていくようにしつけているだけに,居候の身である兄妹が片付けすらしない点がちょっとひっかかりました。ちょっと厳しいかも知れませんが。

 アニメ版では,食べ物が手に入らず,妹がだんだんやつれて病死していくシーンが,けっこう恐くて悲しかったですが,実写版ではそこがかなり省略されていて,兄が盗みをはたらくことの必然性の描写が不十分だと感じました。

 恐かったのは,中学校に火災が発生し,当時「御真影」と呼ばれた天皇・皇后の写真が焼けてしまったために,責任を感じた校長一家が夜逃げして一家心中するというシーン。アニメ版でこのシーンがあったかどうか記憶がはっきりしませんが,妹が亡くなるシーンよりも,むしろこのシーンの方が恐かったです。

 それにしても,原作の野坂昭如氏は,1983年6月に参院選に比例代表区から出馬して初当選後,同年12月に議員辞職して,田中角栄元首相と同じ新潟3区から衆院選に出馬して落選。このあたりから野坂氏は大いに「変人」ぶりを発揮していますが,昔は直木賞を受賞するような,こんな凄い小説を書いていた時代があったんですね。今さらながら驚きました。

|

« 帰省してきました | トップページ | 横尾忠則展 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/149573/42206709

この記事へのトラックバック一覧です: 火垂るの墓:

« 帰省してきました | トップページ | 横尾忠則展 »