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2006年7月29日 (土)

発明の対価

 フラッシュメモリーを発明した東芝元社員が発明への対価約11億円の支払いを東芝に求めた訴訟で,東芝側が8,700万円を支払う内容で和解が成立したというニュース・・・発明対価訴訟では,青色LEDの約6億円,「味の素」の人工甘味料の1億5,000万円に次いで過去3番目の高額だそうです。

 和解した元東芝社員は,「私個人にとっても技術者全体にとっても,裁判を起こした意義があった」とのコメント。僕も技術者の「端くれ」なんですが,同じ技術者としては,正直なところ,ちょっと複雑な心境です。

 この手の発明って,個人の「ひらめき」も大きいかも知れないけれど,そもそもは会社の仕事の中で生まれたもの。発明に至るための設備や人などの資源を発明者個人で負担したわけではないし,特許明細原稿を書くのも就業時間中の業務の一環だった筈。そして出願時には,特許の権利は会社に譲渡する旨の念書を通常は出している筈。なんで給与以外に「発明の対価」が認められるのか,ちょっと理解できない人も多いんではないかと思います。

 この理由は,業務の一環とはいえ,「発明」というのは個人の資質に依存する,極めて「創造的な行為」という考えが根底にあり,このため,法的にも,発明者に対して相応の「対価」の支払いを義務づけていたものと認識しています。それにしても,青色LEDの場合のように,生涯賃金を超えるような金額が個人への「対価」として適切かどうか,個人的にはちょっと疑問です。

 僕も仕事がら,特許はけっこう出願していますが,大半は他社による特許化の防止とユーザへのPRが目的。特許権が取得できたのはわずか1件だけです。それも量産品に適用するような発明ではないため,会社業績への貢献も微々たるもの。下手すると出願・審査・権利維持に要する費用の方が高く付いているかも。多くの技術者の出す大半の特許って,これが実態じゃないかと思います。青色LEDや今回のフラッシュメモリーは,数少ない「有効な特許」なんでしょう。

 それにしても,今回の訴訟,この発明者は会社を退職したからこそ訴訟に踏み切ることができたんだと思います。もし会社に在籍していたら,訴訟はもとより,対価の支払いを会社に要求することなんかできなかったんでしょう。「宮仕え」って厳しいものです。

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コメント

私の同級生も、特許をいくつも取ったけど全部権利を会社に譲るという念書を書かされたと言ってました。その度に3万円もらったって……。
思うに、会社の儲けに比して報償の額が小さすぎると思うんですよね。今回は200万? 
本人も納得するぐらいの額を渡しておけば、裁判にはならないと思うんですけど。特許使用料の何%を渡す、と決めるとか。
和解で8,700万という額を聞いた娘が「安い!」と叫んでいました。すっごく儲かったんでしょうね、会社は。やはり、開発するためにはそうとう心労もあったでしょうし、その成果には報いてあげるのが今後のためでもあると思います。

ノーベル賞をもらった田中耕一さんなどは、お金はほしがらないと思うんですよ、純粋に仕事を楽しんでただけで。でも、そんな浮世離れした人ばかりじゃないですしね。
ノーベル賞受賞のあと、技術者の間では「そのうちノーベル賞をもらうから待ってて」というジョークが流行ったそうですね(笑)。

投稿: dashi | 2006年7月29日 (土) 12時33分

こんにちは。
気の利いたコメントが書けませんので
差し控えますが、
物事に対するかばさんの真面目で真摯な考え方を聞きたくてコメント残さずにこっそりお邪魔ていることが多いです。過去記事も少しづつ読んでいますよー。

投稿: PHENIX | 2006年7月29日 (土) 16時04分

Dashiさん
 コメントありがとうございました。
 当事者の実際の業務がどうだったのかわからないので安易なコメントはできませんが,特許になるような発明の場合,通常は発明者単独の功績ということは無いと思います。同じプロジェクトの人の功績や,先人の知的資産があったからこそ生まれた発明かも知れないでしょう。今回,退職した人に対して対価が支払われたことに対して,同じプロジェクトに参加した他の社員に不満が広がる可能性もあり,難しい問題だと思います。でも,裁判沙汰になったというのは,待遇に関して相当な不条理があったのも事実だと思いますが。

PHENIXさん
 コメントありがとうございます。読んでいただいて光栄です。
 「真面目」だなんて言われたこと,あんまりないですよ~。
 ブログでは,多くの人が考えるのと同じことを書いても面白くないので,なるべく視点を変えて書いてますが,決して性格が歪んでるわけじゃないので,念のため。
 今後ともよろしくお願いします。

投稿: かば | 2006年7月29日 (土) 23時46分

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